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「ヤダ」 「ヤダじゃねぇっ!!」  月曜日の朝からもう何度この言い合いを繰り返しているかわからない。  舌打ちをしつつため息を吐いて腰を摩る獅子谷。  そんな姿もグッとくるんだからもうどうしようもない。  土曜日の夜から結局日曜日もほぼヤり続け、声も出せなくなった獅子谷に『明日学校に遅刻したら別れる』と恐すぎる文言をスマホに打ち込んで見せられて、夜、部屋から追い出された。  で、月曜日からマスクをして腰を庇いつつ最小限しか声を発しない獅子谷。  周りには体調不良だと受け入れられていたが、あれは俺のせいだ。  風邪でも何でもない。  ただのヤり過ぎ。  そして、近づくと「寄るな」と警戒され、また家に行きたいのに「無理」と言われて火曜日の今日もずっとこの言い合いだ。  確かにヤり過ぎたと思う。  でも、獅子谷だって蕩けていたくせに。  俺に擦り寄って甘えてきたくせに。  あんなマスクで覆われていては不意打ちのキスさえできない。 「チッ」  舌打ちをしつつ少し落ち着こうとクルッと向きを変えると、ちょうど歩いてきた奴とぶつかった。 「わりっ」  顔を上げるとそれは亮雅で、亮雅は俺と目が合うとあからさまに逸らして横を通り過ぎて行く。 「返事くらいしろよー」  後ろ姿に声を掛けても、亮雅は立ち止まることも振り返ることもなかった。 「何だよ。あいつ」 「本当。心配だから何とかしてやってよ」  頭を掻くとニュッと横から出てきた祐生。  その顔が少し深刻そうで、びっくりして殴ろうとした手はそのまま下ろした。

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