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「派手にやんなぁ?」
黒髪長髪が髪を掻き上げて微笑む。
「|咲人《さくと》ぉ!結局こいつがお前の女で遊んだガキなんだろぉ?」
ゆったりこっちを指さしてきて、すぐに茶髪が「はい!」と睨んできた。
女のことかと面倒臭く思いつつ、その種は俺だと情けなくも思う。
「圭斗!」
亮雅が必死に叫んでくるが今は聞いてやれない。
何とか二人倒れたが残りはの三人。
かなり頭痛がしてきて正直ヤバい。
サングラスと茶髪はイケるかもしれないが、あの黒髪長髪の雰囲気。
全身黒のスーツもその空気感も……祐生が言っていたヤクザはあながち間違いではないかもしれない。
ケンカ三昧で亮雅に背中を預けながら拳を振るっていた時でさえ倒せたかどうか、と少し迷いは生じる。
でも、ここで引くことはできない。
逃げることもできないし、逃がしてくれることもないだろうから。
「フー……悪ぃな。獅子谷……どんだけでも謝るし、どんだけでも怒っていいから……」
プラプラと手足を動かして首をぐるりと回す。
「やる気か……元気だなぁ」
長髪が笑うと茶髪が拳を作って突っ込んできた。
意外とキレのあるパンチに少しヒヤリとする。
サングラスがしゃがんで亮雅の髪を引っ張り上げているのを目にしても、そこに口さえ挟む余裕もない。
「っ、くそっ……」
最近机に向かって勉強することの多かった体が重くて、避けたつもりの拳も掠るようになってきた。
ヤバい、とは思うがどうにもできない。
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