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 目を覚まして目に入ってくる白い天井と消毒のような独特の匂い。 「……ヤーベぇ」  出てきた声もヒドく掠れていて、 「本当にね」  睨んでくる渋谷の顔からも逃れるように目を閉じた。 「椎堂くん、きみって……バカなのか?」 「うっ……ごほっ!!」  うっせぇ、さえ言えないまま咳き込みながら、全身に感じる痛みにも眉を寄せる。 「はいはい……とりあえず落ち着いて」  背中を擦られてゆっくり息を吐くと、渋谷は更に大きなため息を吐いた。 「……獅子谷は?」 「仕事」  答えながら聴診器を当てられる。 「へ?」  慌てて窓の方を見てもカーテンが閉まっていてわからなかった。 「椎堂くんが寝ていたのは三日だよ?さすがに行かせてるよ」  言いながら引き寄せたパソコンに何かを打ち込んでいく。 「三日っ!?」 「ま、日も暮れたし……そろそろ来るんじゃないか?」  獅子谷が来る……嬉しいような恐いような、どんな顔をしたらいいのかわからなかった。そして、 「亮雅と祐生は!?」  ハッとして聞くと、シャッと目の前のカーテンが開く。 「忘れられてるかと思ったぞ。薄情者」  顔を出した亮雅。  包帯まみれのその姿は痛々しいが元気そうでホッとした。 「あ、よかった……」 「よくねぇわ。助けに来られて……しかも、お前が昏睡状態とか……生きた心地しなかったじゃねぇか」  フイッとそっぽを向かれてその表情は見えない。 「悪ぃ」 「謝んな」 「じゃ、サンキュ、な?」 「お礼なんてもっとヤメろ」  またこいつと話せることが嬉しかった。

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