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 最初は余裕で笑っていた渋谷でさえ獅子谷のことを軽く口にしなくなった。  入院して今日で一週間。  目覚めて四日になっても獅子谷は姿を見せないから。  これは忙しいというより、やはり避けられているんだろう。  スマホにメッセージを送ってみても既読にはなるのに返信はなし。  電話にも出ず、まだベッドから一人では動けない俺は成す術もない。  今日亮雅が退院して一人になった俺は益々嫌な思考にばかり支配される。  考えたくはないのに思い浮かぶのは碌でもないものばかりだ。 「まさか……俺がケンカしたからあいつもまたデリヘルを?」  呟いて頭を振る。  獅子谷のあの肌に触れていいのは俺だけのはずだ。  でも、俺が誓いを破ったのは事実でそれを言われたら謝るしかできない。 「気落ちし過ぎ」  腕で顔を覆っていると、声がして目だけを出す。 「今日もお母さんがみえてたって?」 「ウゼ」  声でわかってはいるが渋谷だと確認して、更に別に嬉しくもない話題に舌打ちしか出ない。 「心配して下さってるんだろ?」 「あーはいはい」  また腕で目も隠すと、渋谷がため息を吐くのを感じた。 「明日、個室空くし、お母さんは個室にっておっしゃってるけど?」 「それより俺も退院させろよ」  母親なんてどうでもいい!獅子谷に会いたい!  それしかなくて、渋谷の話を静かに聞くことなんてできなかった。

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