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 獅子谷がわかりやすいほどこっちは見ない。だが、 「椎堂、体育は無理ですよね?なので、このまま教室に残っていて下さい」  前でそれだけ言って朝のSTを終わらせて教室から出て行った。 「お説教?」  祐生にニヤリとされ、 「よかったな」  亮雅にバシンと背中を叩かれる。 「うっせぇ!だから、てめぇらサボんなよ」  獅子谷が来るなら邪魔なんてされたくなくてさっさと二人を教室からを追い出すと、俺は机に突っ伏した。  誰も居なくなった教室は何となく落ち着かない。  獅子谷は怒っているだろうか?  いや、思いっきり誓いを破ってこんなケガまでしたんだから怒っているんだろうけど。  だが、チャイムが鳴って一時間目が始まっても獅子谷は姿を見せない。 「え、ケガしてっからここで見学ってだけか?」  窓の外を見ると、うちのクラスの授業が始まるところだ。  ジャージを着込んで震えている祐生とコートを着てマフラーもして笑っている亮雅。  ただの見学なら俺もあそこに居た方がよかった気もし始めると、ガラッとドアが開いた。  さっきとは一転、かなりムッとしている獅子谷。 「獅……」 「バーカっ!!」  呼び掛けた瞬間に思いっきり睨まれてコクリと頷く。 「うん。悪かった。ごめん」  謝ると、歩いてきた獅子谷は眉を下げてキュッと唇を引き結んだ。 「心配かけたな」 「知るか」  フイッとそっぽを向かれて何とか立ち上がる。  少しバランスを崩すと、獅子谷はギョッとしてこっちを見てやっと目が合った。

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