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「手、貸して」 「は?ヤダね」  なのに獅子谷は伸ばした手を取ってくれない。  意地を張るようにギュッと腕を組んで手を隠す姿があまりにもかわいくてどうしたらいいか。 「ごめんな」 「うるさい」  睨まれて苦笑するしかない。  ちょっと立っているのはキツくて机に腰掛けて見上げると、獅子谷はピクッと片眉を上げた。 「あの時、来てくれてありがと」  怒っているのはわかっても引くわけにはいかない。 「お前、ヤクザとやり合うとか死ぬ気かよ」  冷たい目を向けられてもこれは俺のせいだから。 「や、でも、俺のせいで亮雅死なすわけにはいかねぇじゃん」 「あれが壬生で、たまたま俺に昔懐いてた奴だからあれで済んだだけだぞ」  申し訳ないとは思いつつ言葉を続けると、獅子谷はため息と共に髪をグシャグシャと乱した。 「ん、だからサンキュ」 「……バカが」 「うん。本当悪かった」 「許さねぇ」  キッと睨まれて肩を竦める。  どうしようもなくてじっと見つめると、獅子谷はパチンとあの日のように俺の頬を叩いた。 「ごめんな」 「……」 「病院にもずっと来てくれてたって?」 「……」  どんどん獅子谷の眉が下がっていく。 「寝過ぎなんだよ。お前……」  その声が震えていてパッと獅子谷の腕を掴んで引いた。  受け止めた衝撃が傷に響いたが、それよりもやっと腕の中に収められたことの安心感の方が勝る。 「ごめん」  もう一度謝ると、獅子谷はギュッと俺の背中に回した手に力を込めた。

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