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「マジでもうケンカすんな」 「うん」  俺の肩に頭を乗せて細い声を出した獅子谷に素直に頷く。  背中に回してある手で引き寄せると、獅子谷は体を寄せてきて更にピタリとくっついた。 「……あんな思いっきりやられてるお前見て血の気引いたぞ」  か細いその声に申し訳なさが募る。 「悪ぃ」  もう何度目かの謝罪を口にすると、獅子谷はゆっくり頭を上げてこっちを見た。 「実と順の気持ちがやっとわかったのかもな」 「は?」  確かめるように頬に触れられて首を傾げる。 「かなり心臓に悪いんだよ。自分が殴られるより何倍も……こっちのがキツい」  何とも言えないその顔を見て守りたかったはずの獅子谷をむしろかなり傷つけたんだと実感した。 「ごめん」 「許さねぇよ!」 「だって……」 「あのなぁ!許して欲しかったら早くケガ治してアホみたいに騒げるようになれ」  ビシッと額にデコピンを食らわされてキョトンとしてしまう。  でも、すぐに照れたようなその顔を見て両腕を引き寄せた。  そのままキスをしようとするとバチンと今度は顔面を叩かれる。 「っ痛ぇ」  さすがに顔を押さえると、獅子谷はフンッと鼻を鳴らした。 「ケガ治るまで触んな」 「はぁ!?」  散々会えなかったのにそんなの……。 「思い知りやがれ」  なのにグッと俺の肩を押して獅子谷はくっついていた体さえ離してしまう。  感じた体の痛みよりも精神的なショックの方が圧倒的に大きい。  じっと見て訴えてみても獅子谷は発言を撤回してくれなかった。

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