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「明後日はクリスマスイブか」
駅から病院までリハビリついでに歩いていると、亮雅は隣を歩きながらこっちを見上げてきた。
「獅子谷と約束してんじゃねぇの?」
「それが何も考えてなかったんだよなぁ。……親居ねぇし家に呼ぶか!?」
ついニヤけてしまうと、亮雅に軽く蹴りを入れられる。
「デレるとかヤメロ」
「は?」
「だらしねぇ面すんな」
更に肩に軽く拳を入れられてベェッと舌を出してやった。
ピクッと片眉を上げた亮雅に笑っておく。
「だって、親たちはパーティーで俺、クリスマスに誰かと過ごしたことねぇんだぞ?」
昔から親は着飾って出掛ける日で、雇われたヘルパーだったり、作り置きの料理があるだけの虚しい日。
プレゼントだけは大量にあったけどモノ淋しくて、いつも早々とベッドに潜り込んでいた記憶ばかりだ。
また飛ばしてきた拳を掴んでやると、
「去年は俺と祐生と一緒に居たけど?」
亮雅は思いっきりこっちを睨んでくる。
「それは女とヤりまくってたからだろーが。クリスマスだからってかいつもの延長だったじゃねぇか」
「お前が意識してなかっただけで、女の子たちはかなり気合い入れてたけどな」
呆れたような言い方。
「へぇ……興味なかった」
「それが獅子谷だとそんなデレまくるって?」
「そりゃ……ヤベ、恋人とってクリスマスどうすんだ?」
「知るか。死ねよ」
マジでワクワクしてんのに亮雅はつれない。
「何だよぉ!」
肩を組んで顔を寄せても、亮雅は呆れたようにため息を吐くだけだった。
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