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「典子さんの病室でクリスマスをみんなで……やらないか?」  笑う渋谷に色々思うところはあるものの言葉が出てこない。  滝本も来る?  幼なじみ三人、また前のように戻ろうとしているのか?  それはかなり喜ばしいことだ。  獅子谷もたまに会いには行っているみたいだが、やはり施設で会うのとは違うだろうし。  しかし、典子さんって……獅子谷の母親だろ?  その病室でって……いいのか?  そもそもそんな場に……俺はどの立場で居ろと?  ずっと目を覚まさないことしか知らない……会ったことさえなくて、どんな状態で居るのかも知らないのに?  てか……二人で過ごすクリスマス……にはならないらしい。  頭に浮かんでいた甘い空想がどんどん消えていくようでそれは悲しい。 「元々言い出したのは実でな?外泊許可も取ってて、その日はうちに泊まることにもなってる」  でも、やっと獅子谷が一人で抱え込んできたその荷を少しずつ降ろしているのだから、それは邪魔はしたくない。  十年。  俺が憧れて探し続けていた間、獅子谷は苦しんで一人耐えてきたんだから。 「……わかった。俺は明後日一緒に居ればいいんだろ?」  いいのかよ?  亮雅の目がそう言っているのはわかる。 「今夜は飲み会だっつってたし……明日の朝からもう押し掛けよっかなぁ」  呟きつつメッセージを送ると、『は?フザけんな』と即返信があって、つい口元を緩めてしまった。

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