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 獅子谷が何度停めろと言っても渋谷は笑ってそのまま運転を続けて着いた渋谷医院。 「……ったく、帰るぞ」 「怜旺、待って!」  着いた瞬間に少し不機嫌な獅子谷は帰ろうとしたが、滝本がすぐに呼び止めた。  さすがに足を止める獅子谷。  ムッとしながら振り返ると、ちゃんと話ができるように滝本の目の前までやってきてその手に触れた。 「せっかく来たからさ、一緒に典子さんに会いに行かない?」  微笑まれて獅子谷は複雑そうな顔をこっちに向けてくる。 「俺も会ってみたいな」 「は?」  獅子谷に睨まれて笑顔を返した。  獅子谷と二人でクリスマスを過ごしたいのはもちろんだが会ってみたいのも本心で、これからパーティーするためにはこいつを中まで連れて行かなければいけない。 「イルミネーション見るにはまだ早いし、ちょっとくらい……ダメか?」  耳元で聞くと、獅子谷はピクッと跳ねてパッと耳を隠した。 「意識もない寝たきりの人間に会ったところで何も楽しくねぇぞ」 「単純にあんたの母親に会ってみたい」  ジト目を向けてくるその手を握ると、獅子谷は少し顔を赤くする。 「はいっ!もーさっさと行くぞっ!!」  甘い空気が漂い始めていたのに、渋谷に背中を押されて俺と獅子谷は足を踏み出した。  滝本も渋谷の肩に掴まっていてみんなでエレベーターに乗り込む。  獅子谷が少し強張った表情をしていたが、手を繋いでやるとしっかりと握り返してきた。

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