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254、第29話「ずっと……」
ふと目を覚まして腕の中で眠る獅子谷の額に唇を寄せる。
昨夜は結局、激しく求めて深く奥まで突き刺して……なかなか止めてやることもできなかった。
その頬に残る涙の跡を指でなぞって申し訳なくなる。
「……ごめんな」
小声で謝ると、ちょうどスマホのアラームが聞こえてきて体を起こした。
余程疲れたのか、獅子谷はまだ眠っている。
そっとベッドから出て開けたままだったドアからリビングを見ると、昨夜俺がソファーに掛けたコートを確認した。
手に取ってそのポケットにあるスマホを取り出す。
アラームを止めて日付を確認すると、小さく息を吐いた。
十二月二十五日、月曜日。
俺たち生徒は冬休みだが、獅子谷は仕事だ。
果たして獅子谷は起きるだろうか?
思いながら一度喉を潤してから、持ってきていた瓶を冷蔵庫から取り出して獅子谷にもホットレモンを用意する。
ふわりと立ち上がる湯気。
眠る獅子谷のために準備するのを少し嬉しく思う。
置いてあったカバンから箱を取り出すと、カップを持って寝室に入った。
サイドテーブルにその二つを置いて、とりあえず落ちているパンツを穿く。
そっと布団を捲ると、獅子谷はまだすやすやと寝息を立てていた。
ずっと眺めていたいのをフーっと息を吐いて切り替える。
「怜旺」
そっと呼ぶと、その眉が少し寄った。
手を伸ばしてきて、その手が俺の腕を掴むとまたスッと穏やかに眠っていく。
「っ……怜旺、起きろ」
そんな姿に身悶えつつ、俺は獅子谷を起こした。
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