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第23話-1 森の温泉

「アル様!こっちですだ!みてくだせえ!」 「わあ。凄い美味しそうだね!」  今日は朝からライナスの果樹園に来ている。果物の収穫のお手伝いをしに来たのだ。始めは皆恐縮して断っていたのだが僕がやらせてほしいと頼み込んだのだ。僕はまだこの地で何が生産されどう作られているかも知らない。もちろん資料や書面だけで指示もできるんだけど、実際にこの目で見て触ってそのもの自体を知らないままで領地管理なんて。形だけになってしまいそうで嫌だったんだ。やるならやるでとことん触れ合って知り尽くしてやる! 「アルベルト様の提案された方法でやってみたら苗の発育状態がよくなったんっすよ」 「そう?よかった!」  ここの土壌は水はけもよく肥えた土が多かった。そのため植えるだけ植えてしまったら豊作になりすぎてしまって出荷時期が重なると市場に出回る価格に影響が出やすくなる。そのため僕は区画ごとに分けて種まきの間隔と時期をずらす方法を試したのだ。そして何も植えない区画をつくりそこは土壌改良をさせることにした。 「おいらたちと一緒に泥だらけになって耕してくれるなんて」 「本当に豊作の女神みてえな方だ」 「んだんだ。あの金色の髪が陽を浴びた稲穂のようだべ」 「ライナスのところの果物は最高だね!甘みもあって喉が|潤《うるお》うよ」 「ありがとうごぜえます!」 「そうだ!この間取れすぎた果物を捨てるって言ってたやつ。それをジュースにしたらどうだろう?」 「ジュースですか?」 「うん。余った皮は砂糖漬けにしてもいいね!」 「砂糖漬け?果物の皮でつくるんですかい?」 「うちは貧乏子爵だったからね、母さまが果物やあまり野菜で僕らにおやつを作ってくれたのさ。僕も作れるよ。弟たちによく作ってたからさ。レシピを書いて渡すね」 「本当ですか!ありがとうごぜえます!」  よし、これを新事業にしてみよう。ここは隣国にも近い。守りばかりに目がいきがちだけど。これを機に交易を考えても良いのではないだろうか? 「国の護りはサミュエルに任せて。僕は特産品や、この地を栄さすことを考えてみよう」  そういえば森林に囲まれている地域はどうなっているのだろう。デセルトに地図をもらっていたはず。少し遠出をしてみようか。 「アル様どこに行かれるんすか?」 「えっとね。森の向こうまで行ってみようかと」 「ではおいらが案内しますだ。この辺りは同じ景色の場所も多い。迷われるといけねえっす」 「そう?ライナスが来てくれるなら安心だよ」

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