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※執務室とトイレ・ウィズ・エリオット その2

 通話を終えてから5分待って、トイレを出る。まるで待ち構えていたかのように、ゴードンがオフィスから顔を出した。 「何やってやがった、この野郎」 「お察し。あと90分ほど空ける。戻る時には市長も連れてくる……モーが帰ってきたら、引き留めておいてくれ」 「75分」  腕のオメガとこちらを交互へ睨みつけるゴードンの肩を叩き、エリオットは笑った。 「お前は優しい奴だな」  執務室の扉を開けた途端、あからさまな性の匂いが顔にぶつかる。光景と言えばもっと露骨だった。靴と靴下だけ身につけた脚をデスクへ乗せ、ハリーはぼんやりと椅子に沈み込んでいた。薄れゆくオーガズムを惜しんでいるのか、それともこの程度の刺激では不十分なのか、こちらに向けられたエメラルドの瞳にはまだ理性が宿っている。そのまま手の中のものを、ごとんとデスクへ投げ出した時に、潤みに怒りの色を混ぜたことが、正気を裏付ける決定打だった。 「よくも、こんな真似……」 「怒らないで。君は声だけで十分魅力的だったよ」 「しばらくの間は、君と話しているだけで勃起しそうだ」 「そうならないよう、搾り取りに来た」  さっさとスーツの上着を脱ぎ始めたエリオットの、普段にない積極性へ、ハリーは微かに目を見開いた。そのまま手を引かれて窓際へ連れて行かれる程には、圧倒されている。 「君、正気か?!」 「大丈夫だよ、ここのカーテンは分厚い」 「大丈夫なもんか、朝の10時前だぞ!」  そんな時間から盛る君が圧倒的に悪いんだよ。今回ばかりはエリオットも内心で呟いた。 「ハリー」  赤外線カメラも防げると前市長に説明された、分厚い布ごとガラスへ手を突かせると、現市長の耳に囁く。皺くちゃになった上着の中で、肩が大きく震える。 「気付くとしたら、第二市庁舎と、間の通りを走る車くらいの物だね。余程派手にしなければ大丈夫だよ」  真っ赤に染まった耳朶へ、わざと音を立てて口付ける。俯くことで露わになる項にも軽く唇を当て、エリオットは左手でハリーの服を捲り上げた。  あれだけ嫌がって悪態をついた癖、背後で緩く兆しているペニスを扱く粘ついた響きだけで、ハリーの頑丈な腰は振れる。「前、自分で触らないの?」と尋ねれば首を振り、ごつんと音が鳴るほど、窓に額を押し付ける。 「い、ちどイッてるから、前、さわると、つらい、痛い……」 「ここのところ君、益々敏感になってるね。もうトップをするのは無理かも知れない」 「そ、んな、やだ……!」  泣き声を笑い混じりの吐息で掻き消すのと、腰を引き寄せるのはほぼ同時だった。 「あぁっ、あ、ぅあ……!」  駄目とか嫌とか抗う上司を動かすのが己の仕事だ。右手を攫い、項垂れているペニスを握らせる。 「男らしく、勃起したら挿れてあげるよ」  それまではお預け。むっちりした尻の狭間へ己のものを挟み込む。本当のところ、ハリーの体は十分美味しく出来上がっていた。擦り立てる度、先端がつるりとした膨らみに引っ掛かる。グロテスクな玩具で暴かれたアナルはまだ、埋めてくれるものを求めてぽっかり開いたままだった。幹を押し付けられたり、軽く突かれたりするたびに、中途半端な刺激がさも不服だと言わんばかりに、ヒクヒクと痙攣が激しくなる。  穴へいたずらしたり、豊満な尻を左右から押し潰したり、己への刺激を強めている間に、ハリーは必死になって己のペニスを擦っていた。 「ん、ぅ、ふぁ、や、無理」 「無理じゃないだろう?」 「ゃ、ほんとっ、も」  肩越しに覗き込めば、なるほど、確かに白く泡立つのは先走りばかり。強く握り込まれたそこはなかなか芯を通すことがない。一応刺激としては捉えているのか、ワイシャツの隙間から垣間見える腹筋が震える。いや、これはもしかしたら本当に痛みを覚えているのかも知れない。ハリーにとってこの2つは同義になり得ることが多々ある。  頬を打つ溜息から逃れようと言わんばかりに、前後へ揺れた体を抱え直して、エリオットは自らの右手をハリーの右手に重ねた。ぬとぬとと汚れた指の間から指を滑り込ませ、浮き出る血管を潰したり、括れを輪状にした人差し指と親指で締め上げたり。  最初にエリオットの指先が触れた時、明らかにハリーは絶頂した。背後から抱き込んだ体が硬直し、食い縛った奥歯がガチガチと音を立てる。けれど、ペニスからは少量の精液がこぷりと溢れ出ただけ。代わりに触れたペニスで、アナルの激しい引き攣れを感じ取った。  後は他人から性器への刺激を受け取るたび、中でオーガズムを得続ける。立っているのが奇跡だった。逞しい太腿が震え、膝が笑い出し、エリオットが腹を抱いていなければ、そのまま床へ頽れていただろう。左手で力一杯握り締めたカーテンを道連れにして。 「ぁ、あ……あーっ……」  この男が市長になってもうすぐ3年。側近以外と関係を持っている様子はない。が、その4人によって、肉体は明確な変化を遂げている。下手人の1人だと言われても、生憎エリオットはそこまで喜べなかった。深まるのは慈しみだけだ。 「ハリー、すまない」  快感へ溺れきり、すっかり虚ろな瞳から頬へと伝う涙を口付けで拭い、エリオットは言った。 「さっき、男らしくなんて言ったけれど。君はもう十分男らしいよ。ここで」  ぱくぱくと喘ぐような動きを作るアナルからペニスを外し、丸みを増した尻を優しく撫でてやる。 「快感を得るのは、女性じゃ無理だ。君は男に抱かれて、男だと示すんだね」 「は、ぇ……? え、る……ぅ、あぁ!」  シャツの裾から手を潜り込ませ、すっかり膨れ上がった乳首を摘んでやる。またイッた。力無いままのペニスから、大量の濁液が放たれる。分厚いカーテンへ掛かった明白な不品行の証を見下ろし、これのクリーニング代はどれくらい掛かるのだろう、とエリオットは茹った頭で考えた──己もすっかり興奮している。足をばたつかせ、必死で胸元の手を外そうとするハリーの悲鳴をしばらく無視するほどには。 「や、ぁ、あっ、エル、やだ、それ、ほんときつい、だめだから、ずっとイッてるから、ぁ!!」  熱が籠り蒸れて、皮を剥いたばかりの果実を思わせる柔らかさと瑞々しさを持つ乳首を根本から縊ったり、捻り潰したり、芯をへし折るように弾いたり。押し当てた手のひらで、分厚い胸の奥、破裂しそうな心臓の脈動を知る。 「挿れるよ」  その一言で、ハリーは鼻を啜り、口からは安堵の息を漏らす。まるで縋り付くように窓へ両手を突き、腰を押し付けながら「早く!」と悲鳴混じりに訴えかけられたら、まともでなんかいられない。  最後の理性で避妊具をつけ、腰を掴むと、一息に貫き通す。 「〜〜……!!」  声にならない声を放つ為に開かれた口から、ぼたぼた垂れ落ちる唾液が勿体無い。そう把握した途端、エリオットはハリーの顎を掬い、口付けていた。ペニスが一層奥深くへ押し込まれ、飲み込んでいる腹が波打つ。思考回路の焼き切れた頭と違い、ハリーの内臓はすっかり恐慌を来している。やっと訪れた気持ちいいものを最初は噛みほぐすよう。先へ突き入れれば待ってくれと粘り気を帯びた襞が追いかけて、捕らえた異物全体を舐め回す。引いてやれば縋りついて、きゅうと強く締め付ける。肉の輪は先端から根元まで満遍なく包み込み、痛いほどだった。   本当はもう少し楽しんでいたかったけれど、ハリーの肉体は限界を迎えつつある。出すものは全て出させるが、抱き潰してはいけない。よく考えずとも、無茶な相談だ。えいままよ、どうにでもなれ。今日は特に外へ出ていく用事もなかったはず。というか、ハリーは最初からそれを見越して、こんな真似をしでかしたのではなかろうか。 「君はとんだ悪い子だね」 「え、る、エルっ」  最初から奥の弁を叩いてやることで、ハリーは急速に次の段階を駆け上がる。 「ひ、ぅ、うう、い、ゃ……!」  乱暴にかぶりを振り立てるのは、なす術なく開いていく結腸口に恐怖を覚えているのだろう。遂に亀頭が潜り込んだ際、もはやハリーは何もかもを放棄していた。  ぶつ、ぶつと音を立てて、カーテンレールから布が半分ほど引きずり下ろされる。咄嗟に手を掴んで引き剥がし、エリオットは糸が切れたようにふらついた市長の体ごと床へ転がった。クリーニング代と修繕代、これは自腹を切る。後で脚立を持ってきてカーテンを外し、汚れはティッシュで拭った後にコーヒーでもぶっかけておけばいい。ゴードン辺りが聞いたら、何てお粗末な作戦だと腹を抱えて笑うだろう。 「ハリー」  泣き咽び、力の抜けた脚で必死に這って逃げようとしたハリーは、名前を呼ばわれ一瞬もがくのを止める。容赦なく隙を突き、エリオットは足首を掴んで哀れな獲物をカーテンの影へ引き戻した。

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