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※子供部屋・ウィズ・モー その2
「同じ屋根の下で家族がいるのに、ボーイフレンドの部屋でこっそりいちゃつきっこするなんて、高校生の時以来だ」
腹に跨り、がばりと威勢よくシャツを脱ぎ捨てるハリーの物言いに、頬の熱は一層高まる。「このベッドで、そう言う真似をしたことが?」と重ねられれば、舌だって縺れようと言うものだ。
「あります……」
「正直で宜しい」
君に好き放題されたら声が抑えられないからと、ハリーは自主的に動くことを宣言した。せめて解す位は? と尋ねた時「相手の名前は伏せるが、帰る前に執務室で一戦交えたばかりだから」と呆気なく白状される。それ以上何が言えただろう。今日市庁舎にいたとなれば、エリオットか、ヴェラスコか、いやゴードンだって19時には戻るとリマインダーには入力されていた。
逞しくなる妄想は、正直にも7分立ちと言った有様の股間を押し潰す、雄大な尻で簡単に掻き消される。
「さっき風呂場で痕跡は全部洗い流してきた……片っ端から男を咥え込む淫乱は嫌い?」
「好きです!」
が本心ではないのだか、嘘とも言い難い。くくっと喉の奥で笑いを転がし、ハリーは自らの左手を尻たぶに伸ばした。広げることで、あの可愛らしく淫らなアナルが空気に晒されたのだろう。
「ん、っ……」
そこが艶々と充血しているのと同じく、ナイトスタンドの明かりで照らされたハリーの敏感な場所は、どこもかしこも熟れていた。効きの悪い暖房は稼働音が大きく、空気を乾燥させるばかりだが、一つだけ良いことがある。撫でる微風にふるりと震えた胸の輪郭、つんと立ち上がった乳首に、思わず生唾を飲み込んだ。
下から手を伸ばしても、ハリーは笑って受け入れた。大きな手で豊かな胸筋をぐにぐにと揉み込まれ、皮の厚い手のひらで粒を薙ぎ倒されると、燃えるような吐息を天井に向かって吐き出す。
「ふふ、っ、君も、興奮してるだろう、っあ」
「はい」
「良い子で、な。まずは挿れないと……」
ゆっくりと腰を持ち上げ、お互いの待ちかねている場所を触れ合わせる。くぷ、と空気に混ざる粘り気の音はほんの些細な筈なのに、暗がりの中で殊更大きく響いて聞こえる。
「あっ、はぁ……やっぱり、君のは、お、っきいから……この姿勢だと、特に、よく分かる」
「無理はなさらず……」
「いいから黙って、ペニス、勃たせてろよ」
少し乱暴な物言いが、彼の余裕のなさを知らしめる。一番太い雁首を押し込む時が最も苦しいのだ。指先にまで蔓延する緊張が突かれた腹越しに感じ取れるから、モーは圧迫感も忘れて、じっと様子を窺っていた。避妊具を付けているとは言え(用意周到にも、ハリーは自宅から封を切っていない一箱を持ち出していた)触れられることのないペニスは限界まで屹立し、震えている。逞しい太腿が粟立ち、その狭間からは、少し飲み込まれたと思えば、くちゅっと音を立てて逃げられる己のものが。
「ハリー、焦らさないで……!」
「じ、焦らしてなんか……分かってる、すぐに……」
自らの言葉によって奮起したらしい。ぐいと一気に、先端が温かい場所へ飲み込まれる。ラテックス越しにも、若干力んだその場所が普段よりも狭いことは容易に感じ取れた。
「は、ぁ……」
色付いた吐息に煽られ、思わずモーが腰を揺らしたのがまずかった。大きく腰が跳ねた後、そうでなくてもガクついていた膝から力が抜ける。その場へ座り込んだ、と言うことは、ずぶずぶずぶ、と一気に根元まで飲み込んでしまったと言うことだ。
「っ?! あ、ぁあっ」
嬌声は夜の帷を簡単に引き裂く、咄嗟にハリーは口元を自らの手のひらで抑えたが、真下で眠っている祖母の癇へ障るには十分過ぎた──この家の間取りをハリーへ伝えなかった己に、下心が全くない清廉潔白の身だと主張する権利はない──すぐさま、箒で下からドンドンとやられ、ハリーは実際に体をペニスで突き上げられる時よりも顔色を悪くした。
「いい加減におし、一体何を騒いでいるんだい!」
「cucarachaだよ、グランマ!」
咄嗟に身を起こせば、ハリーは再び悲鳴で喉を震わせた。裸の胸元へ顔を抱き寄せ、押し付けるようにしながら、モーは階下に向かって叫んだ。声が震えなかったのは奇跡に近い。
「寝てる市長の顔を這って逃げたんだ。今退治したから心配ない!」
「だからベッドで物を食べるんじゃないと、あれ程言ってるだろう!」
それからもう少し、ぶつぶつ愚痴っている声が聞こえ、やがて摺り足がベッドに辿り着き、スプリングを軋ませる。
ようやく腕の力を緩めれば、ぷは、と子供みたいな勢いで息は吸い込まれる。頬の赤みは酸欠の中にも間違いなく快楽が混ぜ込まれており、とろんとした目つきは十分官能的だ。けれどモーは、詰めていた呼気と共に天井を仰いだ。
「クカラーチャ? ゴキブリか」
「いませんよ、祖母は俺が部屋へ隠したものは、絶対に見逃さない。菓子でも、ポルノのDVDでも、何でも見つけ出して捨ててしまいます」
「君も大変だなあ……」
喋ることで喉やら肺やらが動けば、下半身にまで波及するらしい。自分の意思と無関係に蠕動する腸へハリーは息を飲み、咄嗟に目の前の肩へしがみついた。
「っ、モー、続けても、大丈夫かな……」
「大丈夫です。ゆっくりしますから」
俺も動いても良いですよね、と、どさくさ紛れに言質を取ってしまう己も現金な物だと、内心呆れてしまう。だが危険を冒してでも手に入れたいと願うほど、ハリーの中は極上なのだ、仕方がない。腹筋に力が入っているせいで、普段の一撃目よりも深い位置へ己の先端がある。結腸の窄まりで窮屈な思いをしているそこは、もう少し揺さぶりを掛ければ簡単に綻ぶだろう。
知らないうちに、己も政治畑の人間らしい考え方へ少しずつ馴染み始めている。浮かんだ苦笑いを嗜めるよう、かぷりと肩口に歯が立てられた。
「悪い、けど、我慢できなかったら、こうやって歯を立てるかも」
「いいですよ、どうぞご遠慮なく」
寧ろ、彼に痕を残されるのは喜ばしいことだ。自らが余り、つけることを許されないから──腹に溜め込まれた悦楽を逃すよう反り返ったハリーの背中を覗けば、一つ、二つと散った鬱血が視界に飛び込んでくる。かっと頭が焼けるような感覚に促されるまま、モーは腰を突き上げた。
「あっ……!」
掠れた喘ぎが鼓膜を打つ。宣言通り、モーは出来る限り慎重に、その分深い快感を、相手へ与えるよう努めた。座位や騎乗位で好き放題させると、ハリーはどうしても腰を逃がしてしまいがちで、思い切り跳ねるようにして浅いところを擦るか、それが疲れたら緩慢に腰を前後させるだけになる(無理やりモーに白状させておきながら、以前それを聞いたヴェラスコは「巨根自慢か、ほんとやな奴だな」と喚き立てた)
ハリーが本当に感じるところは、結腸口の括れ。ここを強い力で捏ね回され、開いた暁に引っ掛けるように抜き差しされると、しばらく腰が抜けてしまうことすらある。
「ん、あぁ、あ、んっ、モー、それ、っ」
噛みついてやると宣言したが、ハリーは全身を震わせ、甘く鳴いたと思えば、まるでむず痒さを堪えているように歯を食い縛る。身悶えによって相手の胸毛へ乳首を擦り付けたり、首へ回した腕の末端でかりかりと指先が二の腕を引っ掻いたり、こんなの猫が戯れ付くより他愛ない。
「ハリー、もっと?」
「う、ん……? え……ぁ、なに……」
これはティーンエイジャーのセックスではない、だらだらと引き伸ばされるエクスタシーに、ハリーはすっかり酔っ払ったような表情。ぼんやりと蕩けた顔は頑是なく、モーが益々猛っても、うーっと赤ん坊が泣き始める時のように甘ったれた唸りを発するだけ。
ぐぽ、ぐぽ、ぐぽ、とゆっくりしたペースで最奥のその先を、円周を広げるように掻き回す。あー、と震える、殆ど息のような音を肺から押し出し、ぐらりとハリーの頭が後ろへ傾ぐ。慌てた余り、モーは抱き込んでいた腕で腰を思い切り引き寄せた。
「は、ん、ぁ、モー……」
「ハリー、大丈夫ですか」
腹に当たる感触で、彼がもう射精という段階を飛び越し、ずっと中で極め続けていると知る。彼が感じてくれていることにほっとして緩んだ頬に、ばか、と不貞腐れたような声がぶつけられる。
「ばか、この気が利かない秘書、こういう時は、キスするものなんだ」
ここで急いで顔を近づけるから、いつまで経ってもジャーヘッドだとからかわれ続けるのだろう。ハリーは積極的に唇を開き、舌を差し出してきた。突き上げる腰の動きを大きく、激しいものに変えれば、ハリーはモーの口の中へ、上擦った声を思う存分吐き出した。
ベッドが軋んで凄い音を立てている? 大丈夫。耳が遠い老人は、高周波の音を拾いにくくなる物だから。
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