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※職員付オフィス・ウィズ・ヴェラスコ その2

 乳を求める子猫だって、こんな必死に食らいついては来ないだろう。含みしゃぶられ、吸われて扱かれ、最初はハリーもキモいとか赤ん坊じゃあるまいしとか抵抗していた。だが30分も続けていれば、まともな反応を返すのも難しくなる。カウチの上でぐったりと伸び、今の彼は、ただ刺激を与えられれば反応を返す機械も同然だった。 「あ、あぁ゛っ、や、ぁ……ゔ、ぇ……」  ひゅう、ひゅうと不規則な呼吸に混ざり込む掠れた嬌声と、溢れる唾液を飲み込み損ねた咽せ返り。上半身が軽く浮き上がる程の反応が欲しくなれば、弄り回されてすっかり敏感になった乳首が弾けそうなほど歯を立て、ふくりと膨らんだ乳輪周りごと豊かな肉を揉みしだいてやればいい。すっかり項垂れているのに、壊れた蛇口もかくやと精液を溢れさせ続けるペニスからも、どぷっと一際濃い白濁が噴き出す事だろう。  さて、口唇期も重要だが、いい加減大人にならなければ。身を起こし、額に張り付いていた髪を掻き上げると、ヴェラスコはすっかり大人しくなった獲物を見下ろした。 「ハリー、準備は?」 「ん……」  心の準備と言う意味で聞いたのだが、ハリーは大義そうに右脚をカウチの背もたれに引っ掛け、逆の足で座面に爪先立った。差し出されるような格好になったアナルは一見慎ましやなものの、皺を濡らすようにうっすら滲み出たぬめりが、彼の状態を教えてくれる。  これですらまだ足りないと言わんばかりに、背中から回した手をそろっと蒸れた場所へ這わせる。人差し指と中指、いきなり2本まとめて差し込まれた。ぐちゃ、ねちょと接着剤でも捏ね回しているような水音と共に、指は押し下げられ、広げられる。 「ん、うぅ、あ、ぅ」  穴の形が歪になればなるほど、充血したピンク色の粘膜が突きつけられる。ぴっちりと締め上げられた指の肌色との落差が堪らない。ごくりと唾を飲み込み、ヴェラスコは引き出した自らのものへ手を添え、擦り立て始めた。 「、一人で遊んでて、哀しくないんですか、っ」 「焦らしてるのさ、分かれよ、っ」  陶酔のみを表す、とろんと弛緩した表情筋を見下ろしていれば、益々心は荒ぶるし、上下させる手の動きも激しくなる。  やがて、ちゅぽっと音を立てて指が引き抜かれ、腹筋に篭っていた力が抜ける。崩れた楕円形に開くアナルが正気へ戻る前に、ヴェラスコはハリーの右脚を抱え上げた。ぴとりと押し当てる時に、本来はもう少し、焦らしたりフェイントをかましても良かったのだろう。けれど、この筋がくっきり浮き上がるほど興奮しきった可哀想な己のものを、これ以上虐めるなんて余りに酷だ。気付けばヴェラスコ自身、背中から下腹まで汗を掃いている。  ぐぐぐっと、ゆっくりした、けれど確たる動きで腰を進める。 「ゔ、ぁ゛、あああっ」  ぞくぞくと一際大きく肩を跳ねさせ、性毛が擦れるまで押し込んだ後は、痙攣だ。ぴんと天井に向いて伸びきった右足の爪先も、踏ん張る左の踵も、頭上の肘置きをきつく握りしめる手も、全てが震えている。顎へと垂れる涎がぼたぼたと座面に滴り落ちるのも気付かない程、ハリーは絶え間なく与えられる快感に浸っていた。 「ヴェ、ラぁ、それっ」 「怖いですか?」 「こ、こわい」 「でも気持ちいい?」 「ん、きもち、きもちいい」  もはやハリーは自分の頭で考える事を放棄して、ヴェラスコが口にした事を片っ端から復唱することで、会話をしているつもりになっていた。 「ねえ、ハリー……僕のこと、好きですか?」 「ん、んぅ……すき、すごく」  だから気に食わなかった。こんなの、ハリー・ハーロウではない。いつもしっかりした足取りでヴェラスコの数歩先を行く、闊達な辣腕弁護士。  そして、無謀にも部下の危機へ駆けつけ、一度寝た相手へは余計な情を残してしまう、誰もが苛立ち、渇望する小さな善意の持ち主???  よく分からなくなってきた。どうでもいい。  ゆっくりしたストロークで余裕を気取っていられたのは最初のうちだけ。担いでいた脚へしがみつくような勢いで、ヴェラスコは腰を振りたくり続けた。 「んん゛っ、あ゛、あっ、は、ぁ」 「ハリー、何度もイくのとっ、一度気絶するまで、良くなるの、どちらがいいです?」 「ぁ、は、ど、どっちも……分か、ない」 「あなたが選ばなきゃ駄目ですよ。そうしないと、好きにしちゃいますからね」 「んっ、そ、れでいい……! も、滅茶苦茶に、してくれ!」  うっすらと眉間に皺を寄せ、襲い来る悦楽を恐れているように目を閉じているにも関わらず、ハリーの唇は笑んだまま。ペロリと舐める舌先が挑発の意図を持っていないのだとしたら、やはり彼はとんだ淫乱だ。  お墨付きは貰った。後はこちらの頑張り次第だ。これでも女性相手には「このdick head」と罵られた事だって1度や2度ではない。  と言うか、ハリーはもはや、ヴェラスコがどんな動きをしようと怪獣のように叫び、身悶えた。思い切り潰すよう、浅い位置にある前立腺を叩いてやったと思えば、奥の窄まりを躙る──いや、既にそこはうっすらと綻びかけ、先端の穴から精液を絞り出せはしまいかと、躊躇しながらも意地汚い蠕動を繰り返し、ひくついていた。 「ぅ、ぅん、ひ……ああっ、あっ、あっ、やだ、ヴェラっ!」 「ハリー……っ!」  食い縛った歯の向こうから唸り、ヴェラスコはがつがつとひたすら深みを目指した。きり、と爪を立てられたカウチの背もたれがきしる音を、遠くで聞く。  ふと流れ込む汗へ瞬かせた目を持ち上げたのは、たっぷりと膨らんだ雄大なハリーの胸に目を奪われたからだ。  絶対に大きくなった。反らされた喉元からしっとり汗を浮かせた胸へと順に、身体の輪郭へ視線を舐め走らせながら、ヴェラスコは確信した。受身の快感を与えられ過ぎると、男を誘う肉体になるということだろうか。  難しいことは分からないし、というか余り知りたくはないが。何せ今はペニスでのエクスタシーを追い求めたい──頭がぼんやりしてきた。彼の中はいつ突っ込んでも最高だ。熱く濡れていて、パーティーガールが会場を出る時腕を絡ませてくるように、ひしと己のものに身を纏わりつかせ、油断したら取り込まれそうになる。 「あ、ヴェラ……?」  無言で抱えていた脚を下ろしたヴェラスコに手を引かれれば、ハリーはすぐさま理解した。そのまま体の下へ身を滑り込ませてきた情人の胴を跨ぎ、立派に勃起したペニスを後ろ手に掴む。  が、茹だった脳では身体を制御するのが難しいのだろう。ふらつく身体はなかなか狙いを定める事が出来ず、亀頭にアナルが吸い付いたかと思えばずるりと滑り、会隠にを抉ってしまってはヒッと悲鳴を上げる。  勿論、そうそう悠長に待っていられるほどヴェラスコも余裕があるわけではない。 「ここですよ」  ふうっと大きく息をつき、文字通り腹を括ると、ハリーの両手首を掴む。 「あ、ちょ、ヴェ、ラ……!!」  元々貫き通されていた場所は、驚くほど呆気なくペニスを飲み込んだ。ぺたっと完全に腰を下ろしたものの、ハリーに休むことは許されない。串刺しにされた身体は、胎内に戻し入れたものを再び味わい始め、勝手に内臓を反応させてしまうのだ。 「ひっ、あ、あぁっ……」  もういいだろうと思う頃合いは、我ながら短かった。ヴェラスコが突き上げ始めてしばらくのあいだはハリーも「まって、まって」と呂律の回らない口調で訴えていた。だが開いてしまった直腸の淵をぐるりと擦られると、慎みの無い嬉声を放ち始める。 「うぁ、あ、ああ、ん、きもちいい! やっ、ヴェラ、これ、すごくいい、んだ……!!」 「外に聞こえますよ」 「い、今更、かまうもんか、あぁっ、そこ、もっと!!」  喘ぎに比例して跳ねる勢いも激しくなる。ペニスの皮膚が、蛇の脱皮の如く、粘つき絞り上げる襞へ持っていかれそうな心地良い恐怖に、ヴェラスコも腰の動きを激しくした。それでもなお、ハリー・ハーロウというのは御せる存在ではない。がちりと奥歯を鳴らし、ヴェラスコは激しくひくつく腹筋から、胸元へと手を這わせた。ぐいと両の手で思いきり鷲掴んでやる。 「っ〜〜!!!」  それで、ハリーはいった。最後まで芯を通すことのなかったペニスからだくだくと放ちながら、ふっと糸が切れたかのようにこちらへ倒れ込んでくる。触れ合う胸が擦れ合う感触で、太腿にまた熱い液体が吐き出されたのを感じた。 「少し、やり過ぎましたかね」  荒げる息の合間に尋ねる時は、出来る限り涼しい口調を作った。それが盛大に癪へ障ったのだろう。ぜいぜいと、途切れ途切れながらも、火照った耳に吹き込まれたその言葉は、ヴェラスコの背中を愉悦で震わせるのに十分事足りた。 「悪い子は、お仕置きだぞ、ヴェラ……」

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