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模範試合
<side龍臣>
副団長としてジョバンニと共に訓練場に足を踏み入れた時から、ジョバンニに対する視線の多さに気づいていた。
と同時に私に向けられる警戒の視線にも気づいていた。
まぁ見慣れないものが騎士団の中でも大切な存在であるジョバンニにくっついているのだ。
警戒しないわけがない。
あいつとあいつからはジョバンニに対する邪な気持ちが見える。
そんな奴らが入団試験に受かったことに驚きだが、まぁジョバンニに何かしようとしたらその時に徹底的にやってやればいい。
成績順に並んでいると聞いたが、やはり上位の者から感じる気迫は素晴らしいな。
特に一番右に並んでいるものはずば抜けている。
さすが入団試験で一位を取っただけのことはある。
私があやつを値踏みしているように、あやつもまた私のことを品定めしているのだろうな。
この騎士団の副団長に値する実力を持っているのかと。
ジョバンニの挨拶中、ジョバンニを好意的な目で見るものが多かった。
本人はこんな視線などもう慣れきっているのだろうが、伴侶としてはいい気はしない。
私の挨拶となった時、かなり|下手《したて》に出て話をしつつも、最後の最後で
「私の隣にいるジョバンニ副団長は、私の愛しい伴侶です。ジョバンニに手を出すようなことがあれば、その時は命を覚悟なさってくださいね」
と牽制をしてしまった。
我ながらおとなげないと思いつつも、若い騎士たちを見るとどうしても言わずにはいられなかった。
なんせ私は40を疾うに過ぎたおじさんだからな。
同じようにジョバンニも私が若い騎士たちに心移りするのではと心配してくれていたから、ジョバンニが私以外に心移りするわけないとは思いつつも、やはり余計な芽は摘んでおかないと。
私の牽制に騎士たちは震え上がっているようでやりすぎたかと心配になったが、クリスさんがこそっと
「よく言ったな。それくらいしておいた方があいつらのためにもいい」
と言ってくれたのでよしとしよう。
<sideクリス>
「よし。挨拶はこの辺にしてそろそろ訓練に入ろう。まずは入団試験でトップの成績を取ったものと模範試合を見せよう。これを見て、他の騎士たちはしっかりと勉強するように! 良いな」
「はっ!」
騎士たちがさっと訓練場の中央を囲むように並び始めた。
「トモキ、あちらの席に移動しよう。上からの方がゆっくり見られるだろう?」
「はい。クリスさんが連れて行ってくれますか?」
「ああ、もちろんだ。さぁ、行こう」
騎士たちの迫力に圧倒されたのか、少し怖がっているようにも見えるが大丈夫だろうか?
少し心配になりつつも、訓練はやめるわけにはいかない。
トモキを抱き上げたまま訓練場の上の観覧席に向かい、ジョバンニと並んで座らせた。
「トモキ、訓練が終わって私が迎えにくるまでここから動いてはいけないぞ」
「はい。あの、クリスさん……」
「んっ? どうした?」
「あの……怪我、しないでくださいね」
「ふふっ。大丈夫だよ。任せていてくれ」
「もし怪我したら僕が手当しますから!」
「ああ、そうだな。頼むよ」
私の怪我の心配をしてくれる者がいてくれるとはな。
本当に伴侶というのはありがたいものだな。
「ジョバンニ、くれぐれも頼むぞ」
「承知しました」
急遽ジョバンニを護衛としたが、怪我の功名とでもいうか、なかなかにいい選択だったんじゃないか。
タツオミにも騎士たちの訓練を手伝ってもらえるし、本当によかった。
「よし、ならばルイージ! 中央に来い!」
騎士たちのいる場所に戻り、そう大声で叫ぶと少し震えた声で返事が聞こえた。
「は、はいっ!!」
ははっ。
さっきのタツオミからの牽制が聞いているのか、かなり緊張しているようだな。
「タツオミ、そこの木剣を頼む」
「はい。どうぞ」
タツオミが渡してくれた2本の木剣のうち、1本をルイージに渡し、訓練場の中央で向かい合った。
「緊張することはない。ルイージの力をしっかりと見せてくれ。そのためにここまで来たのであろう? ここで本気を出せないなら騎士などやめた方がいい」
「――っ!!」
ふふっ。少しは気持ちが昂ってきたか?
ルイージはここ数年の入団試験の中でもかなり優秀だと言っていた。
その実力を見せてくれ。
「タツオミ、声かけをっ!」
「はい」
タツオミの声に、訓練場中が水を打ったように一気に静まりかえる。
ルイージの速い息継ぎの音が聞こえる中、
「始めっ!!」
その言葉と共に、ルイージが私に一気に向かってきた。
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