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第5話 あと一歩の気持ち(6)★

「高山さん――俺、も」  その先は言葉にならなかった。  代わりに、空いていたもう一方の手を自らの下腹部に伸ばしていく。おずおずと下着の中に手を入ると、すでに濡れそぼっている自身を握って上下に扱きだした。 「やらしいヤツだな。我慢できなかったのか?」  言葉にされて羞恥が沸き立ったが、一度動きだした手は止まらない。侑人は恨めしげに高山の顔を見上げた。 「誰のせいだと……」 「っは、俺だな。責任はとってやるよ」  軽く笑ってこちらの手を取ると、高山は腰を寄せて互いのものを擦り合わせる。そして、手を重ねたまま一纏めに握り込んだのだった。 「……っ、ん」  先端同士が触れ合えば、まるでキスでもしているかのように先走りが糸を引いた。  互いの熱や脈動を感じ取るうち、どちらからともなく手を動かし始める。最初はゆっくりだった動きが次第に速くなり、いつの間にか侑人は夢中になって快感を追っていた。 (やばいこれ、擦れて……)  裏筋が擦れる感覚に身震いしながら、無意識のうちに自分のものを押し付けてしまう。すると、それに応えるかのように高山が力強く握り込んできた。 「侑人、腰揺れてる」 「だって、きもちい……っ」  背中を丸めて、与えられる快楽に身を委ねる。  次第に息が上がってきて限界が近いと見るや、高山の手つきが変わった。射精を促すようにカリ首を扱かれ、鈴口を指先でぐりぐりと弄られる。  そのあまりの気持ちよさに侑人は身悶え、高山の首筋に顔を埋めて喘いだ。 「や、ぁ、高山さん……もう、だ、だめ……っ」 「イきそう?」 「んっ、も、出る――イく、イくうっ」  押し寄せる快楽に抗うこともできずに、呆気なく熱を放つ。  けれど、高山の手淫は終わらない。射精後の余韻に浸る間もなく与えられる刺激に、侑人は息を乱して震えるばかりだ。 「あっ、やだ、あっ……あぁ!」 「っ、もう少し」  高山から吐息混じりの声がこぼれる。それから間もなくして、こちらに煽られたかのように高山の昂ぶりが熱を放った。 「……は、っ」  二人分の白濁が混ざり合い、互いの手を汚していく。その感覚にすら感じてしまい、侑人は熱っぽく息を漏らした。 (絶対、熱上がった……)  脱力しながら、ぼんやりと考える。  やがて絶頂の波が引いていくと、高山がわざわざ温かい濡れタオルを作って体を拭いてくれた。 「ほら、ティッシュで拭くよりいいだろ」 「ん……」  侑人は小さく返事をしてされるがままになる。体力を消耗したせいか、急激に眠気が襲ってきていた。 「疲れたか?」 「今ので、完全に体力持ってかれた」 「そいつは悪いことしたな」 「悪いなんて思ってないくせに」  拗ねたように言えば、高山は苦笑を浮かべて髪をくしゃくしゃとかき回してきた。 「まあ、否定はしない。お前も気持ちよさそうにしてたしな」 「っ、もう寝る!」  体を反転させて背を向ける。  すると、高山が笑う気配とともにベッドが再び沈んだ。すぐに背後から抱きしめられる格好になり、くすぐったいような気恥ずかしいような気持ちを味わう。  言うなら、今しかない。そう思った侑人は、顔を背けたまま口を開いた。 「あ……あのさ、高山さん。今年のクリスマスはこんな感じになっちゃったけど……来年、またリベンジさせてくれよ。次はプレゼントなんかも用意するからさ――」  これだけは伝えておきたいと、どうにか言葉を紡ぐ。  返事など照れくさくて聞いていられなかったので、「お、おやすみ!」と告げて知らんぷりを決め込むことにした。  高山はしばらく黙っていたが、やがてうなじに口づけが落とされたかと思うと、耳元でそっと囁いてきた。 「ああ、楽しみにしてるよ」  その声音はひどく穏やかだった。

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