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おまけSS 甘やかされて甘やかして♡

 風呂上がりのリビングにて。侑人はソファーに腰掛け、高山に髪を乾かしてもらっていた。 「……髪くらい、自分で乾かせるってのに」  などとぼやくも、相手は知ったことではない。ブオーッ、というドライヤーの音に混ざって鼻歌が聞こえてくる。 「侑人って、髪サラサラで触り心地いいよな」 「聞いちゃいねーし」 「うん? お前だって喜んでくれるし、一石二鳥だろ」  カチッとドライヤーのスイッチが切られる。  どうやら髪が乾いたらしく、高山は感触を確かめるかのように梳いてきた。 「そりゃ、嬉しいんだけどさ」  侑人は心地よさに目を細める。  あれやこれやと、世話を焼かれるのが嫌なわけではない。むしろ大好きだ。  ただ、こうも尽くされてばかりだと、不公平な気がしてならないというか――たまに気が引けてしまうのである。 (俺だって、高山さんのこと……) 『ベッタベタに甘やかしてやりたい』と高山は言うが、それにしたって損得の兼ね合いは大事だと思うし、こちらだって相手を想う気持ちは同じなのだ。  相変わらず髪を梳いていた手を取ると、侑人は意を決して言ってみせた。 「ねえ、高山さん。たまには俺にも何かさせてよ」  その言葉に、高山は少し考える素振りをしてから笑みを浮かべたのだった。 「こんなことで本当にいいのかよ?」  戸惑いを滲ませるこちらに対し、高山はソファーに寝転がって、頭を膝の上に乗せてくる。――高山が提案してきたのは膝枕だった。 「なに言ってんだ。俺を癒すことができるのは、侑人だけなんだぜ? 自分じゃ上手くできないことをしてもらうのが、一番いいに決まってるだろ?」 「そうは言っても……首とか痛くねーの? 男の膝とか硬いばかりだろうに」 「いや? やっぱいいな、こういうの――すげえ落ち着く」  すっかりリラックスした様子で、高山が身を委ねてくる。  何気なく頭を撫でてやれば、気持ちよさそうに目が細められて、侑人は胸がドキドキとするのを感じた。 (……もっと、いろいろしてやりたい)  そう思うとともに、あることを思いついた。いったん席を外させてもらい、寝室の小物入れから目的のものを取り出す。  戻ってきた侑人の手にあったのは、梵天付きの耳かきだった。 「まさかとは思うが、それって」 「せ、せっかくだし……耳かきとかどう?」 「また随分とベタだな?」 「いいだろ、べつにっ」  ほら、とソファーに座って膝をぽんぽんと叩く。  高山は促されるまま寝転がり、再びこちらの膝に頭を預けてきた。からかうような言葉を口にしながらも、どこか期待しているようである。 「じゃあ――その、失礼します」  髪を避けつつ耳朶に触れ、ゆっくりと耳かきを滑り込ませる。  すると、高山がわずかに身じろいだ。浅い部分を触ったにすぎないが、その反応に思わず手が止まる。 「ごめん、痛かった?」 「いや、少し驚いただけだ。続けてくれ」 「う、うん」  耳かきを持ちなおし、慎重に中を探っていく。  硬くなった耳垢を掻き出してやれば、高山は心地よさそうに息を吐いた。 「……気持ちいい」  ぽつりと呟かれた言葉に、つい照れてしまう。  太腿への重みが増すのを感じながら、侑人は耳の中を丁寧に掃除していった。  他人の耳かきをするなんて初めてだから、勝手がわからなかったが、そのうちにだんだんと要領がつかめてくる。 「高山さん、反対向いて?」  耳かきを引き抜き、先端をティッシュで拭いながら声をかけた。続いて反対側も――と思ったのだが、高山の返事がない。 「高山さん?」  見れば、高山は安心しきった様子で寝入っていた。すうすうと穏やかな寝息が聞こえてくる。 (俺に癒されるのって、本当なんだ……)  日頃からそうなのだろうか。何でもそつなくこなせる男だというのに、自分のことを必要としてくれているのが、嬉しくてたまらなくなる。  侑人はじわじわと満たされながら、手を伸ばしてブランケットを手繰り寄せた。そしてそれを、膝の上で眠る恋人にそっとかけてやる。 (なんか、ちょっと可愛いかも)  いつも甘やかされてばかりだが、こんなのも悪くない。  侑人は目尻を下げ、優しく高山の頭を撫でながら寝顔を眺め続けた。

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