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第6章⑬
久太郎は少しずつ進み、晴の内側を暴いていく。指が入ったところより、さらに奥へ――。
晴は引きつけでも起こしたみたいに、浅く荒い呼吸をくりかえした。時折、痛みから来る悲痛な声が混じる。
「晴くん。ごめん…ーーああ。でも、すごくいい」
久太郎の声もざらついて、うわずっている。
太ももの付け根をつかまれ、腰を持ち上げられる。押し込む動作をくりかえし、ついに久太郎のものが全部、晴の身体の内側に飲み込まれて、おさまった。
その頃には、晴は息も絶え絶えになっていた。
指先が冷たい。なのに、腰のつながったところが焼けるように痛くて熱い。
その痛みの中に、ただ怪我をした時には決して味わうことがない、切なさが混じっていた。
その切なさのせいで、頭がじんと鈍くなった。
久太郎が晴の目元ににじむ涙をぬぐい、それから片方の手を晴の手に重ねてきた。
「動かすけど、いい…?」
答えることも億劫だった。晴は首をほんのわずかに、縦にふる。
久太郎が身体を引く。それから、最初の一突きがきた。
「ひっ…!」
内側のひだがこすられるのが分かる。突かれるたびに、高いところから地面に叩きつけられ、また上に跳ね上がるような感覚を味わう。
それだけではない。もう、これ以上、進むことはないと思っていたのに、突くにつれてさらに奥へ入ってきた。
「……うぅ…ぁ……?」
少しずつ、痛み以外のものが強く身体をひたし始める。
切なさに似ているが、もっと底が見えない。晴の声の変化で、久太郎も気づいたらしい。
何度か突いて、晴の反応を見る。探し当てられた場所に、久太郎がしきりに刺激を与えた。
「やぁ…! ……やぁっ…」
「気持ちいい?」
「うぇ…あ……?」
「いいところ、突くから。たくさん気持ちよくなって」
「いや、ちょっ……ひぁ! あー!!」
うめき声とは明らかに違う。嬌声が、立て続けに上がった。
苦痛と快楽が唐突に逆転し、晴はたちまち圧倒された。
萎えていた自分のものが、ピンと張る。抽送の合間に、久太郎がそれを握ってしごく。
達するのに必要だったのは、ほんの数十秒だった。
「…あぁぁーー!」
晴は身体を弓なりにして、絶頂を迎えた。熱い飛沫が勢いよく噴きだす。それを浴びた久太郎の動きが一気に激しくなる。
「……っ!」
射精で震える晴の腰を両手で強くつかみ、久太郎も達した。避妊具をつけていても、その熱が中で感じられるくらいに、激しかった。
…出し切ると、久太郎は力尽きたように晴の上に覆いかぶさった。身体中汗だくで、火から下ろしたばかりの鉄瓶みたいに熱く、湯気さえ見えそうだった。
熱を発する久太郎の身体に腕を回し、晴は包み込むように抱きしめた。
汗が、熱が、匂いが、久太郎の存在全部が、愛おしくてたまらなかった。
久太郎が、自分の運命そのもののように思えた。何年、何十年経っても、死ぬその時まで、晴は久太郎を愛し続ける自信があった。そうなりたいと、思った。
晴は久太郎に頬ずりし、自分から唇を重ねた。
自分自身を身勝手と感じる。多分、この先ずっと後ろめたさを抱えて生きていくのだろう。
それでも――。
「――久太郎」
「うん…?」
「俺はお前と一緒に、時を重ねたいや」
晴は、久太郎のいるこの時代の人間になろうと思った。
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