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第4話-4

(今日はなるべく早く帰ろう)  そしてあの牛丼屋に行くんだ。もしかしたら彼に会えるかもしれないし、会えたら気持ちに整理が付けたお礼も言いたい。  いや、九にお礼を言われるのは彼も困るだろう、なにせ味噌汁飲んで急に泣き出した客だ、気持ち悪がられるのは必須で、とてもじゃないが自分でも気持ち悪いとしか言いようがない。  でもどうしてか、彼に無性に会いたい。 「……別に好きとかそういうんじゃなくて……」  パソコンに向かいキーボードを叩きながらぼそりと呟く。  確かに自分はゲイだ。恋愛対象が異性に向かないのは多感な高校生の時に気がつき、それ以降も女性に興味を持たず彼のような綺麗な男に見惚れてしまう自分を自覚して、時間のある時は新宿二丁目に通ったりしていた。だがヒョロヒョロで顔もパッとしないプログラミングが唯一の趣味である隆則は、モテなかった。悲しいくらいにモテず、未だ恋人を持てたためしはないし、童貞(バージン)卒業できたのもプロに金を払ってである。  そんな隆則が好意を抱くには、牛丼屋の彼は上質すぎた。 (あれはどう見たってノーマルだから、俺なんかまず眼中にないか)  カチャカチャコマンドを打ち続けながら、頭の片隅で彼のことを考えてしまう。  誰からも好感を抱かせる雰囲気の良い笑顔に整った顔立ちそして180cmの長身、これだけでも異性にはモテるだろうが、しっかりと付いた筋肉は同性にも人気はあるだろう。なにせ二丁目には逞しい筋肉隆々のごつい男を啼かせたくて仕方ない人間が多く存在している。  彼の性癖がどちらに転ぼうが、自分が相手にされることはないと隆則自身が一番よく分かっている。  だから、あくまでも鑑賞するだけ、ちょっと親しくなれたならラッキーだ。 (でもあの顔と腕は理想だな……)  少し甘さのある優しい表情に見つめられるだけで隆則の下肢は疼いてしまう。その上少し筋肉の浮き出た腕に抱かれたならと夢想してしまうほどの逞しさはただただ羨ましい。どんなに運動しても、その後仕事で削げ落ちてしまう隆則はただただ憧れるだけだ。 (憧れるのは勝手だよな)  自分よりもずっと年若い男が自分の恋人になればなどと夢見ることなど最初から放棄している。  それより少しでも話す機会があれば、それだけで充分だ。むしろ、柱の陰から時々見れれば満足。下半身の処理はプロか自分の手ですればいいだけだ。 (そういえば最近抜いてないな……)  今夜あたりちょっとエロサイト観ながら自己発電でもするかとぼんやり考えながら、着々と難しい言語を入力していった。

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