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第5話-2

 小さくペコリと会釈して食券機に向かい合いながら、自然と口角が緩んだ。 (やっぱりカッコイイな)  今度は間違えないようにちゃんと千円札を確かめながら挿入し、味噌汁と牛丼並のボタンを押した。  今日は完璧と食券機を離れようとする隆則に、あの店員が声をかける。 「お客さん、おつり取り忘れてますよ!」 「あっ……」  振り向けば食券機のメニューパネルがまだ光っている。慌てて短い距離を駆けよりおつりボタンを押し出てきた小銭を財布にしまう。全く格好つかない自分に顔を上げられないまま、前回と同じように紅潮した頬で同じ席に着いた。食券をテーブルに置き、スマートフォンを取り出し見ているふりをしながら彼が近づいてくるのを待つ。視界の隅にあの理想的な腕が伸び、食券を確認するように書き込んでいく。 「あれ、今日はこれだけでいいんですか?」  前回よりも量が少ないことを指摘され、また自分がなにか失敗したのかと慌てて顔を上げた。 「うっ……」  間近で仰ぎ見た彼は、やっぱりカッコよかった。自分の理想を具現化したような優しさと逞しさを併せ持つ姿形に、ついドキリとしてしまい、頬だけではなく首までもが紅くなる。幅に短いカウンターを挟んだだけの距離で自分を優しい眼差しで見つめてくる彼は、挙動不審になる隆則に、それでも愛想のいい笑みを浮かべ話しかけてきた。 「前より少ないですけど、いいですか?」 「あ、はいっ……前ちょっと食べ過ぎたから……」  仕事が詰まると食が細くなる隆則は基本胃が小さく、一度に食べ過ぎるとその後思いっきり下してしまう体質で、あの次の日は朝からずっとトイレに籠ってしまったのだ。  正直この量だって多いくらいである。だが男のプライドで並よりも小さいのを頼むことはできずにいた。 「分かりました、すぐに持ってきますね」  ニカッと好青年の笑顔を向けられ思わず顔を伏せる。 (笑顔がまぶしすぎるっ!)  これでは今日のおかずにしかねないだろうと僅かに興奮しながら、奥へと去っていく背中をこっそりと熱い視線で見つめてしまう。

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