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第5話-3

 どう見てもノーマルそうな彼が、ゲイに熱い眼差しを受けていると知ったら気割られるだろうと顔を伏せながらではあるが、それでも見ずにはいられない。 (やっぱり格好いいなぁ)  あの大きな手が自分に触れることなど絶対にないだろうが、もしそうなったらと想像するだけで憤死しそうだ。生まれてこの方恋人がいた例のない隆則は無駄に想像力だけが逞しくなり、どんぶりと椀が乗ったトレーを手にした彼が再び近づいてくる頃には、もう頭の中が彼のことでいっぱいになっていた。しかも妖しい妄想で脳内が埋め尽くされているから、もう彼の顔を見ることが出来なくて、目の前に置かれた食事を慌てて掻き込んだ。  途中で残すのは彼に申し訳なくて、やはり自分には多すぎた食事に胃が苦しくなるがなんとか最後の一粒まで胃袋に収める。これで頼みすぎたなんて恥ずかしくて口にできないが、平静を装って小さく「ご馳走様」と呟いて席を立った。 「ありがとーございますっ!」  深夜に似つかわしくない元気な声を聴いて、また口元が緩む。やはり彼の存在は自分の癒しだ。年若い男に癒しを求めるのはどうかと思うが、それでも仕事の疲れはいつの間にか消え、清々しい気持ちになる。胃袋は重く明日もトイレの住人になるだろうと容易に想像できるが、それでも浮上した気持ちは捨てがたい。  店を出る前にもう一目チラリでも見られればと振り返れば、彼はあの印象の良い笑顔を浮かべながらこちらに小さく会釈していて、つられるように隆則もフワリと笑顔になって会釈を返していた。  どの店でも不愛想な態度ばかりを取ってきた自分なのに、なぜか彼が相手だと自然と笑みが零れ落ちるのに気付かないまま、ゆっくりと帰路に就く。 「いいな、あの牛丼屋の店員」  玄関を入って脱ぎ散らかした服の間を縫うように歩きながら風呂場へと向かいながら、彼の顔を思い出す。そして会ったばかりなのにまた会いたくなってしまう。  服を脱ぎ捨て熱いシャワーを浴びながら、彼の表情や仕草、低いのに恐怖を与えない心地よい響きの声を思い出しながら身体を清めていけば、いつの間にか元気になっている下半身がそこにあった。 「やば……」  店内で脳内妄想した内容の続きが頭の中に勝手に流れてくる。  だがここは誰もいない自分の家だ。しかも風呂場で誰かが入ってくる心配も中ればシャワーの水音で声が漏れることもない。 (ちょっとくらい……いいか)  あんな好青年をおかずにするうしろめたさを引きずりながら、隆則は元気になった分身に手を伸ばした。  あの節張った長い指がゆっくりと自分の身体をなぞっていくのを想像すればそれだけで分身がもっと元気になり、彼の手だと思い込みながらそれに触れると「ぁ……」と甘い声が零れ落ちた。

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