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第6話-2

 ここしばらく風呂にも入ってないからそんなに頻繁には掃除しなかったが、そこにはいい具合に抜け毛が溜まっていた。思わず先祖の写真が頭を過る。皆見事なまでのテカリ具合を持った頭皮なのを思い出し、シャンプーに目をやれば、適当に選んだ女性用の安いものだ。さすがに身なりを気にしない隆則でもこれには危機感を覚え始めた。なにせ、禿はモテない。しかも世間からの風当たりは異様に強く、薄毛や禿というだけで色んな目で見られてしまう。  恋人がいた例がないうえに禿になってしまったら、もっと恋人ゲット率が下がってしまう。  さすがにそれだけは回避しないと……。 「スカルプシャンプー……に切り替えるか……」  口にして涙が出そうになる。年を取ったつもりがなくても、身体は確実に老化への道を突き進んでいる。  買い物を終えたら老化防止に関するサイトを読み漁ろうと決意しながら汚れていない服を発掘して着替え、マンションから出た。 「もう夜か……」  時間を気にしない生活をし過ぎて、今が朝なのか夜なのかわからなくなる。  さすがにこんな生活では社会不適合者まっしぐらだ。  しかもスマートフォンの時計は程よく深夜を指している。 (買い物ついでに牛丼屋に寄ろう)  急激に仕事の依頼が増えて家から出られなくなり、あの店に行くのも久しぶりだ。  仕事を辞めて二ヶ月は貯金で気ままな生活をして一時は毎晩のように通っていたが、急激に増えた依頼に追われ、ここ一ヶ月まともに通うことができなかった。ようやく『彼』とも顔見知りになり目が合えば会釈をするくらいにはなったというのに。でも仕方ない、これから食べていくためには仕事をしなければならないし、やはりプログラミングをするのが好きだ。自分が作り出したシステムが順調に稼働するのも楽しいが、難しい依頼だと余計に完成させる楽しみが大きい。汎用性や拡張を盛り込んだ内容だとなぜかワクワクしてしまい、変なアドレナリンが放出されるのだ。  だが、そのために社会生活をおざなりにしてしまいがちで、結果があの部屋だ。  隆則はコンビニでゴミ袋を買いながら、明日は日が出ているうちにドラッグストアに行こうと心に誓う。深夜すぎて空いている店がコンビニくらいしかないのでは、毛根に優しいシャンプーなんて売ってやしない。 (ついでに育毛剤とかも買っておいたほうが良いかな……あと、掃除用の洗剤とかも買わなきゃな)  床が見えないくらい汚い自分の部屋を思い出し、あそこにまっすぐ帰る気にならずフラフラと寄り道をしながら牛丼屋へ行こうとして、商店街にその灯りがないことに気付いた。 「あれ?」  確か一か月前までそこにあったはずのオレンジ色の光が全く見えない。 「定休日か?」

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