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第6話-4

 相手はすぐに出た。 『こちら110番です。事件ですか、事故ですか?』 「あ……火事です」  すぐに自分が間違え電話をしたことに気付いたが、なぜ架け間違えたのかがよくわからず慌ててそれだけ言って電話を切り今度は消防に架けた。  今の消防はスマートフォンのGPSからすぐに場所の特定を行ってくれるようだ、しどろもどろになっている隆則を優しく導き、場所の確認をするとすぐに消防車の手配をするという。  後しなければならないのは……。  隆則は冬の冷たい空気を肺一杯に吸い込んで、今までにないくらい大きな声を上げた。 「かじですよーーーーーーっ!」  何度も叫んだ、これが社会不適合中年の隆則にできる精いっぱいだ。思い切り叫び続け、その声に暗かった家々に灯りが点く。そしてワラワラと人が集まりだし、同時に消防車のサイレンも町中に鳴り響いた。 (よかった……これでなんとかなる、よな)  何度も冷たい空気を肺一杯に吸い込んだせいか、喉は掠れいがらっぽくなっている。これは家に帰ったら絶対に風邪薬と葛根湯を一気飲みしないと熱が出るパターンだ。屋外にこれほど長時間いることのない隆則だ、何度も冷たい空気を吸い続けたら弱っている身体にウイルスが入り込むのは容易だろう。 (まあいっか。どうせ会社辞めたし、急ぎの仕事もないし)  人々の叫び声とサイレンの音でアパートの住人がそこから着の身着のまま飛び出てくる。暗闇の中で人々が集まっているほうへと走ってくる住人の姿にホッとして帰ろうかと思っていたら、そこに警察までやってきた。 「すみません、この中で通報した方はいますか?」 「あ、はい。自分です……」  思い出した、警察は通報があればどんな案件でも必ず赴かなければならないのだと。それがどんなに些細なことでも。ここで逃げるのもおかしいと名乗りを上げたが、さてなにを話せばいいのかわからない。消防に架けようとして間違って警察に架けただけなのだから。  だが、警察からはなぜこの時間に出歩いていたのか、なぜここの前を通ったのかを逐一聞かれ、その口調は事務的というよりは少し怒張を含んでいる。  普通なら寝ていて当たり前の深夜二時に買い物に出ているほうがおかしいだろう。 「あの……仕事が終わってご飯を……」 「なんの仕事ですか?」 「あ……フリーのプログラマーで……」

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