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第7話-4
「洗濯すればいいだけですからもったいないじゃないですか」
「でも全部洗濯するの無理だから……」
「できますよ、俺がやりますから」
「いや……いやいやいや! 君はお客さんだから!」
そこでようやく思い出す、彼に一晩の眠りを提供するために連れてきたはずなのに、蓋を開ければ汚れまくった部屋の掃除をさせている。
(こんなんじゃダメだろーーー!)
慌てて壁に掛けてあるカレンダーを見れば、二ヶ月前の物で、慌てて今月へと替えて今日の曜日を確認した。退社してから二ヶ月、すっかり曜日感覚が失せている隆則は日付はかろうじて覚えられても、曜日までは把握できていなかった。
「良かった、日曜日だ……」
だが、彼の仕事が世間一般の休日と異なるのかもと思い直す。だって飲食店に休日なんて存在しないだろう。しかも彼が居たチェーン系の牛丼屋は年中無休を売りにしていたはずだ。
「ごめん……仕事大丈夫……ですか?」
服を柄物と仕分けしている彼に問いかける。
「仕事? ああ、バイトの事ですか? それならもう閉店したので今はしていないんですよ」
「バイト?」
正社員じゃなかったのか。
そこでようやく隆則はバイトという存在が世の中にあることを思い出した。そうだ、基本的にコンビニや飲食店はアルバイトの存在で賄っている業種で、システム系だとどうしても守秘義務などが絡んでくるのでそう簡単に雇うことはできないが、世の中の学生たちはアルバイトをしているとニュースでやっていた。
「えっ……君、学生さん?」
「自己紹介まだでしたね。水谷遥人です、二十歳で○○大学で学生してます」
「は……たち?」
うそだろ……と声を発さず唇が動く。若く見積もって二十代半ばがせいぜいだと思ってたのに、まだ成人したてだなんて誰が思うだろうか。
隆則の驚きに慣れているのか、彼――遥人は苦笑しながら手は止めずに素早く洗濯物を分けていく。
「よく言われるんです、凄い老け顔だって。でも本当です……身分証何もないですけど……」
今頃彼の身分を証明するものはすべて濡れたまま冷たい外気にされされていることだろう。
「いや、信じるよ……信じるけど……」
にわかには信じられないのが本音だ。そんな体格も中身もしっかりした成人した手の人間がいることが驚愕で、同時に成人したての若者が掃除も洗濯も完ぺきにこなして、さらに不甲斐ない年長者をナチュラルに助けてくれたり優しい言葉をかけたりするのかと思うと、いたたまれない。
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