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第7話-5
自分の生活能力は十五歳も下の彼に、到底及ばない。
その事実に打ちのめされ、どーんと落ち込んだ。
「ごめん、何回も助けてもらって……自分が恥ずかしい」
「いや、そんなことないですよ。さっき警察に言ってたじゃないですか、さっきまで仕事をしていたって。自宅で仕事をしてるのも凄いですし、こんな良い場所に住んでいるのはやっぱりできる人なんだろうなと思ってます」
それが精いっぱいのフォローだとしても、隆則の気持ちを簡単に浮上させる威力を持っていた。
「えへへ」
こんな格好いい人に褒められることなんて滅多になく、照れながらも思わず笑みが零れてしまう。
「あ、でも洗濯とか面倒だろうから、本当に捨てちゃうから気にしないでくれ」
「何を言ってるんですか。洗濯すれば使えるんですからもったいないことはしないでください」
ワイシャツだけを集めた洗濯物を抱え、遥人が洗面所へと向かう。
「すみません、洗濯石鹸とかってありますか?」
「洗剤なら多分この辺に……」
慌ててその後を追い、いつも洗剤をストックしている棚を開く。うっすらと埃が乗った棚の中にいつ購入したかもわからない液体洗剤を取り出して渡すが、遥人の視線は洗剤ではなく、その棚に凝視されている。
「え?」
「……あの、あとでここも掃除していいですか?」
「いやいやいやいやいやいやいやいや、もういっぱいしてもらってるからいいって!」
「でも一気にやっちゃったほうが良いですよ」
「というか、君は昨夜から少しも休んでいないんだから少し寝ようよ。今布団を出すから」
「俺、結構丈夫なので大丈夫です。さっさとやってしまいますね……どうせ今日は大学も銀行も役所も開いてないのですることがないんですよ」
本来ならゆっくりと自宅で休養を取るはずだったのだろう、あの火事さえなければ。申し出は嬉しいが、そこまでしてもらうのが申し訳なくて。
「じ、自分でやるから……」
雑巾を取り出し、数ミリになっている埃を取り除いていく。
(こんなところ、引っ越してから掃除したことないよ)
普通の人たちはここまで掃除するのだろうか。なにせ生活能力ゼロの隆則だ、一般的なのがよくわからない。
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