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第7話-8

 そうだ、素足のままなのだ。だが服以上に靴は難しい。どんなに頑張ったって自分よりもずっと大きな足を綺麗に収められる履物などどこにもない。 「そうだ!」  寝室のタンスから一番伸縮性の高い靴下を取り出し、少しだけ大きめだと思っていたサンダルを出す。スニーカーや革靴では絶対に無理だろうが、季節外れのサンダルならまだ少しは可能性がある。寒さは靴下で誤魔化してもらうとして、少しは温かくできるだろう。 「ありがとうございます」  下駄のようにはみ出してしまうがそれでもぎりぎり履けたことに安堵し、家を出る。  まだ六時の冷たい夜風が残る町の中は人の姿は相変わらずない。  商店街とは反対にある国道沿いのファミレスに向かいながら、これからどうしようと考えた。 (少なくとも、このまま帰すわけにはいかないよな……)  なにせ彼の住居はとても住めないありさまだ。かろうじて荷物が見ずにかかってなかったとしても、もうあそこに住むことはできない。新たに住む場所を探すにしてもその間の拠点は必要だろうし、でなければ大変だろう……。  だが。  こんなバイト先に時々現れた客の家にいるより、彼ならきっと友達も多いことだろうし、その友人の家にしばらく厄介になることもできるだろう。たまたまあの場に居合わせたからこうして隣を歩いているのであって、そうでなければあの牛丼屋がなくなった今、もう接点など何もない。むしろここで一緒に歩いていること自体が奇跡だ。 (もう少し何かしてやりたいな……)  なにせ、家に招き入れて掃除をさせてしまったのだ。その上これから洗濯もさせてしまうことになる。その礼となることを隆則はまだ何もできていない。ただ朝食を驕るだけでは余りあるほどにしてもらっているのだ。 (なにかないかな……)  考えながら歩けばすぐにファミレスに到着する。がらんとした店内には従業員の姿しかなく、一番日当たりの良い席に案内されメニューを広げられる。そのあまりにも美味しそうに撮られた写真を見てようやく昨日の昼食以降何も口に入れていない隆則の腹が鳴った。 「あ……」  なぜ今鳴る! もっと別の、彼が居ないところで鳴れよバカ野郎と自分に脳内で怒鳴りつけながら、頬が段々と熱くなっていく。 「俺も腹が減りました。あの、なんでも注文していいんですか?」 「ど、どうぞ! 好きなだけ食べてくれていいから!」  タイミングの良い問いかけに慌てて力いっぱい答えてしまう。 (絶対聞こえてて、フォローしてくれたんだ……)  若いからからかってくると思ったのに、思いの外遥人は人を思いやる方の人種らしい。あの営業にこのスキルがあったならと思わずにはいられなかった。

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