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第7話-9
モーニングメニューの中で一番ボリュームが少ないフレンチトーストとサラダのセットにする。
偏った食生活で段々と胃が小さくなっている隆則にはこれでも量が多いくらいだ。
(少しは生野菜食べておかないと)
そうでなくても、ずっと弁当の揚げ物ばかりを食べ続けてきたせいで胃が重くなってより量が食べられなくなってきている。少しは自分を労わろうと新鮮な野菜を取り入れようとするが、単身自炊なしだとコンビニや店のサラダが精いっぱいだ。
だが目の前に座った遥人はがっつりとした和定食のページを開いてじっくり悩んでいる。朝からご飯とか凄いなと感心しながら、眉間にシワを寄せるほど悩んでいる彼につい言葉をかける。
「食べたい量だけ頼んでいいから……」
「本当にいいんですか?」
「好きなだけ頼んでいいから」
「ありがとうございます!!」
一瞬にして遥人の顔が輝いた。年相応の無邪気な表情にこちらまで和んでくる。
和定食で目玉焼きと焼き魚の二種類を選び店員に告げる。
食事が出てくるまで間が持たず、隆則は気になっていたことをおこがましいかなと思いつつも訊ねた。
「水谷くんはこれからどうするつもりだ?」
きっと彼からはリア充な答えが返ってくるだろうと少しだけ構えながら、それを誤魔化すようにコーヒーを一口すすった。少しだけ指先が震える。
この町から去ってしまえば、もう、会えない。そしてその跡も辿れない。だからきっと、別れてしまったらもうおしまいだ。大勢の人がひしめきあう首都で、再び偶然に出会う確率なんてどう考えても低い。その偶然の割合をはじき出すためのコマンドが自然と頭に浮かんで、組まなければ叩きだせないくらいの低さであることは確かだ。ここで別れたなら、もう二度と会えない。
ゆっくりと開く唇を恐る恐る見つめながら心の準備をしていく。癒しを失う覚悟をしておけば、辛くない、から。多分。
そもそも、こんなにも最良な癒しに出会えたこと自体が偶然であり奇跡なのだ。きっと今まで仕事を頑張り続けてきた自分への神からの小さなプレゼントでしかないのに、自分は少し縋りついている、だけなんだ。
「……何も目処がないんですよ今……こういう場合って普通どうするんですかね」
思い込んでいた答えとは違ったアバウトな回答に併せて話を振られてたじろいだ。
「俺に普通とか聞かれても……」
隆則の世界は狭い、プログラミングを趣味にして生きてきてそれがたまたま時流に乗って就職し高給を得ることができたから、特に苦労した記憶もないし、そもそも急に住居を失うような体験をしたことがない。レアすぎて会社員時代にもそんな話を耳にしたことがない。だから、ネットや漫画で聞きかじった情報を思い浮かべてしまったのだ。
だが今それを彼に告げれば「そうか!」と食事が終わった途端に店を出ていきそうで怖い。
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