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第7話-10

 どうしてか繋ぎとめたくてしょうがない隆則は答えを出さずにさらに質問を繰り返した。 「あの牛丼屋以外にバイトってしていない?」 「はい……なので敷金とかも難しいですし、あそこよりも家賃の安い所なんてそうないだろうし」 「だったらバイト、しない?」 「えっ?」  思い付きと衝動とは得てして恐ろしいものである。普段の隆則なら絶対に口に出せないことをポロリと思い付きそれを口にしてしまったのは、仕事開けのほぼ徹夜状況のアドレナリン分泌量がおかしいせいだ。 「俺の家で住み込みの家政夫をしてくれ!」  それがとても良い提案のように思えるのだから、仕事開けというのは危険でしかないのだ。 「家事一切を任せる代わりに、住居と生活費は俺がまかなう、どうかな?」  それならいつでも癒しの存在が家にいて、彼の家事能力なら部屋が散乱することもないし、久しぶりに店屋物やコンビニ弁当以外が食べられる。こんな凄い提案を思いつける自分は凄いと変な自画自賛を始める。 「でも迷惑じゃ……」 「むしろ助かることの方が多いと思う、俺一人だったらあの部屋だから……」  あの部屋と言った途端、納得したように「ああ……」遥人が頷いた。隆則の生活無能力者ぶりを嫌と言うほど見てしまったのだから当たり前だ。どんなに家事をフォローするための機械が充実している昨今でも、使う人間が正しく使用しなければ無用の長物でしかないのだ。それに家事をすべて賄うことは未だに不可能なのである。洗濯機は洗うことができてもその後に干して取り込んで畳み片づけるのは人の手で行うしかない。全自動掃除機が存在しても、床に散らばった服を片付けなければ正常に動くことができない。料理にいたってはまだ作るのは人がしなければならないのだ。  そのすべてを彼がしてくれるならこの上なく快適だろうし、その上若干ではあるが給料を支払うことができるくらいの稼ぎは隆則にはあった。 「頼めないかな?」 「住み込みで本当にいいんですか?」 「むしろその方が助かる。もうまともに食事してないんだ」 「あ、それなら……そういえばまだ、名前伺ってませんでしたね」 「そうだった! 五十嵐隆則です」 「五十嵐さん、よろしくお願いします」  ぺこりと遥人が頭を下げ、慌てて隆則も「こちらこそ」と頭を下げた。  そして二人の奇妙な雇用関係が始まった。

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