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第9話-14
隆則が何度か蜜を吐き出すと纏っていた衣服をすべて剥ぎ取り、苦しい態勢で指一本動かせなくなるまでずっと、前を触られることなく後ろの刺激だけで達かされた。
(違う、こんなんじゃない……)
欲しいのは罰だ。乱暴にされて達ってはいけないのだ。痛くてもうそこで男を受け入れようと思わなくしたいのに、もう二度と誰にも欲情しないようにしたいのに、
半面、理解もしていた。彼は絶対に客の快楽を優先することを。いくら乱暴にと言われてもルールが存在するのだ。
散々喘いで枯れた喉を震わせながらポロリと涙が一粒、眦から流れ落ちた。
二時間のプレイを終えてシャワーを浴び服を整えたデリヘルボーイはそれに気づいて慌てた。
「すみません、満足できなかったですか?」
「ちがっ……」
一粒また一粒と涙が零れ続ける。
「ごめん……はると……」
隆則は骨と皮ばかりの手で顔を覆って泣き始めた。
「あー……失恋ですか。もしかして相手、ノンケ?」
顔を覆ったまま頷く。
「ノンケを好きになっちゃだめですよ、傷つくの五十嵐さんなんですから」
分かっている、分かっていて何度も止めようと思った。何度も恋の芽を摘もうとした。でも抜き取ることができなかった。馴染みの彼に髪を撫でられても、その優しさでは遥人へと向かう気持ちを打ち消すことはできない。
「時間薬で忘れるのが一番です……この部屋、あと一時間はいて大丈夫ですから」
「あ……りがっ」
鼻を啜りながら礼を言えば、「いつでも呼んでください。いくらでも相手しますから」と慰めの言葉を残して出ていった。一人になった部屋で、隆則は存分に泣いて、それからフラッとバスルームへと向かった。頭のてっぺんから肌が痛くなるくらい熱いシャワーを浴びた。
時間が来て部屋を出て会計を済ませた後、行き場はどこにもなかった。クリスマスイルミネーションが取り払われた街にはその名残がわずかに残るばかりなのにそれでも賑やかで、笑いながら身体をくっつける恋人たちの姿やスマートフォンで時間を確かめながら無表情で駅へと向かうサラリーマンでひしめき合い、自分だけが居場所も帰る場所もない感覚に囚われた。
世界の中で独りぼっち。
もう出すものがないほど欲望を満たされても、心は空っぽのままだ。
どうしたらいいのかわからないまま、コートの前を掴み合わせ、身体を縮ませながら歩き始めた。夜風が自分めがけて吹いているようで心だけではない、身体もどんどんと冷えていく。行く当てのない隆則は終電が終わる時間になってもひたすら歩き続けた。
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