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第10話-3
「デリヘル? なんでそんなの呼ぶんですか!」
「すっきりすれば変な気を起こさなくていいと……」
小さくなりすぎて余計に頭の動かなくなった隆則は尋問を受けているような感覚でただ訊ねられることに答えるばかりとなった。
「どんな気を起こすつもりなんですか」
「き……君をおかずに……とか」
「……もしかしてそのデリヘルって女の子じゃない、とか?」
「そっそうです!」
完全に立場が逆転しているのも気づかないままひたすら怯え続ける。しかもどんどんと質問内容が危うくなっていることに気づかないままほぼ一問一答となっていた。
「あれ、俺をおかずにしてたということですか!」
「ごめんなさいっ」
「それで、デリヘルと何をしてたんですかっ」
「うっ……後ろからしてもらいました」
「五十嵐さんはしてもらうほうなんですかっ」
「ゲイのネコでごめんなさいっ」
「なんで俺をおかずにしたんですかっ!」
「好きになってごめんなさいっ!」
「俺のことが好きなのに他の人に抱かれたんですかっ」
「君が気持ち悪がると思って……嫌われたくなくて……」
あんなに泣いたはずなのに、怖くて悲しくて、またポロリとなみだが流れ落ちる。少し伸びてしまった髪が隠してくれることを祈りながら、ぎゅっと奥歯を噛み締めた。嫌われたくない。蔑まれたくない。今までした恋と同じように恋の蕾を散らせたくない。だから必死で隠してきたのだ。でもまた同じことの繰り返しだ。きっと気持ち悪がって罵倒されるに違いない。同じゲイにだって受け入れられない自分だ、ノンケの彼がこんな存在を気持ち悪がるに決まってる。
ポロリ、ポロリと後を追うように涙が流れ落ちる。
「なんで俺が嫌いになるんですかっ」
「水谷君みたいにカッコいい奴がゲイなわけないし、俺みたいなの好きになってくれるはずないっ」
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