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第10話-7

 プロの手で開発された身体はその一点を掠めた時、無意識に跳ねた。 「あ、そういうことなんですね……ここがっいいんっですねっ!」  短いスパンで強く擦られ、押し寄せてくる快楽から逃げようと何度も髪を振り乱し涙を飛ばすが、口から出るのは意味をなさない甘い声ばかりだ。しかも今まで痛みで萎んでいた分身までがそれに悦び擦られるたびに形を変えていった。眉間に皺を寄せなければ堪えられないほどの愉悦が身体を駆け巡っていく。馴染みのデリヘルに散々突かれた後だから余計に敏感で、欲望が僅かにでも当たるだけで隆則は啼きながら蕾からその奥までを使ってさっきとは違った力で彼を締め付けずにはいられなかった。  器用な遥人はコツを得たとばかりにそこに狙いを定めながら腰を打ち付けてくる。その度に嫌だと暴れていた太ももは逞しい腰を強く締め付ける。 「こんな顔っそいつに見せたっんですかっ」 「ああっ……んっ……も……」  内壁からの刺激でガンガンに硬くなった遥人の欲望が感じる場所を掠めながら奥へ奥へと今まで知らない場所を暴き続けようとする。その苦しさにすら隆則は甘く啼くしかなかった。いつの間にか欲望が抜けるのが嫌できつく締め付け、挿るときにはそこが当たるように自分から腰を動かすようになり、数時間前に何度も達ったはずの分身は透明な蜜を溢れさせそれを遥人の逞しい腹筋に擦り付けていた。 「いくっ……も……だめ……」  自分を犯しているのが誰かもわからないくらいに感じ切った隆則は先端を何度も何度も腹筋に刺激し続けながら中のいい場所を突かれる、今まで味わったことのない強い快感に、耐えることもできずそのままビクンビクンと強く彼を締め付けながら量の少ない蜜を飛ばした。その刺激に奥の奥に熱い迸りをぶつけた遥人の身体が倒れ込んできた。  確かな質感と汗の滲んだ肌の感触に、苦しいと思うよりも胸が締め付けられた。  萎れていたはずの葉先がまた新たな栄養を与えられピンと伸び、温もりを糧にどんどんと茎は伸び蕾を付け始めた。  鼻を啜れば遥人の首筋から漂う独特の匂いが鼻孔をくすぐった。 (遥人に……抱かれたんだ)  しかも二度もこの身体で達った。最後のほうはもう訳が分からないくらい何度も何度も身体中を愉悦の電流が駆け巡り脳をおかしくさせていた。気持ちよすぎて達くことしか考えられず、自分から卑猥に腰をくねらせ続けるほど、狂った。馴染みのデリヘルボーイにしてもらった時だってこんなに気持ちよくなったことがない。不慣れな隆則に合わせてセーブした心に僅かな平常心を残せる交情しか経験してこなかった。  放心するくらいに深い快感を熱い吐息で少しずつ逃がしていき、少しずつ考えられるようになると幸せだった心は一気に凍り付いた。 (遥人の前で達った……)  触れられることなく後ろの刺激だけで達く変態だと絶対思われた。いや、もう同性にしか欲情しない時点で充分変態と思われているだろうし、恋焦がれているのが遥人だと知られた今、隆則に残された道はただ一つ、遥人との別れだ。どんなに恋い慕っても、もう二度と会うことはできない。  きっとこれは神が哀れな自分にくれた奇跡なのだろう。好きになった相手にたった一回だけ抱かれるという、甘くて優しくてこの上なく残酷な奇跡を。

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