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第11話-6

「そうだな……次の仕事のチェックを終えたら今日は眠れる」 「そうですか。では今夜は一緒に眠れるんですね」  きっといつもの体調管理のためのスケジュール確認だと高を括っていたが、綺麗な箸遣いで煮魚の身をほぐしながら、日常会話の一部、業務確認のような物言いで遥人は告げてきた言葉に、意味も分からず頷いた。 「では納品が終わったら一緒にお風呂に入りましょう。お湯、溜めておきますね」 「あ……うん」  そういう意味かと理解して、でも拒めず俯きながら小さく頷いた。  最後にしたのは元旦だから、一週間していないことになるとようやく気付き、トクンと胸を鳴らしながら血液がいつもよく早く身体中を駆け巡るのを感じる。心音が速すぎて、さっきまで美味しく感じられた料理が急に味を失う。美味しい食事が終わって仕事を済ませたなら、今度は自分が美味しく頂かれるのだと思うと、味に集中できなくなる。  鮮やかな七草が散らばっているおじやをひたすらゆっくりと時間をかけ食すのは、その時間になるのを長引かせるためだ。ゆっくりと匙を運びながら、けれどいつか終わりは来る。一人用の土鍋一杯に作られたおじやがなくなり、煮魚も汁だけになればもう食事は終わりだ。  僅かな会話しかできないまま、テーブルを片付けを遥人に任せて自室の戻れば、組み上がったプログラムのコマンドミスがないかをチェックして個人サーバーに投げ込み、動作確認を行う。デバックは専門のスタッフが行うからと言われているので、簡単な確認をした後、まだ担当が会社にいるだろう時間にメールを送りつつ、先方の専用サーバにアクセスし、システムをアップする。  あまりにもスムーズに作業が進み過ぎて、予定よりもずっと早く納品作業が終わってしまった。 (どうするか……やっぱり一緒にふろに入らないとだめだよな)  遥人と一緒に風呂に入る。ただそれでは終わらないことは年末年始で実証済みだ。また軽いノックの後、遥人が顔を覗かせた。 「納品、終わりましたか?」 「あ……ああ」  のらりくらりと躱したり嘘をつけばいいが、そんな高等能力は隆則に備わっていない。  YES OR NO で質問されればどちらかを答えなければならないのが辛い。なぜだろう、関係が深まってからというもの、遥人から向けられる質問はいつも二択で、嘘やごまかしができない隆則はその度に現状を伝えるしかなかった。

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