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第11話-7
「お湯入ったので風呂に行きましょう」
嬉しそうに隆則の手を引いて広くはない風呂場へと向かう。服を脱がされ浴室に放り込まれると、そこから指一本動かさず座っているしかない。髪も身体も丁寧に、しかも加齢臭対策のミントの香りがきついシャンプーで丁寧に洗われた後、しっかりとトリートメントでコーティングしるマメマメしさを発揮し、身体もたっぷりと泡立てたこれまた高年齢男性向けのボディソープを塗りつけられ、柔らかい手つきで丁寧に余すところなく磨かれる。
全身の泡を落として湯船に使っている間に、ものすごい速さで遥人も全身を綺麗にしていった。手際がいいのか隆則を洗う半分の時間で済ませ、当たり前のように湯船へと入ってきた。バスタブの六分目まで入っていたお湯がジャーっと溢れても気にせず背後から隆則を抱きしめ、己の膝に乗せる。
「あ、隆則さん少し太りましたね!」
執拗に全身を撫でるなと思っていたら彼なりの健康チェックだったようで、変な意味合いがあるのかと期待してしまった自分が恥ずかしくなる。成人男性が二人で入るにはやや狭いバスタブで、当たり前のように膝に乗せたのはこれがしたかったのかと、少しの残念と安堵に身体の力が抜けた。
最近はシャワーで済ませることが多かったから、久しぶりに全身にまとわりつく温かい湯の心地よさに、次第に力が抜けていく。ずっとモニターばかりを眺めていたせいか、肩に入り過ぎていた力が抜けると、自然と遥人の肩に後頭部を乗せ、弛緩していく。このまま眠ってしまいたくなるが、それではまた遥人に迷惑をかけてしまう。なんせ付き合う前に風呂場でぶっ倒れた隆則の介抱をさせてしまったのだ。
(でも風呂って気持ちいい……)
立ち上る湯気が視界を曇らせながらたっぷりと水蒸気を含んだ空気が鼻を通って喉を潤していく。自室は除湿器がかけられているせいで、潤った空気の心地よさは水分を抜かれ過ぎてしまっている隆則の気管支を助けてくれるようだ。
毎日でもこんな風にゆっくりと風呂に浸かりたいが、仕事中に風呂なんか入ったらその後仕事にならない。
少なくとも締め切り間近は絶対に入れないから、こんな風にゆったりできる時間は至福でしかない。
遥人が皮膚の感触を楽しむように肌を辿り満足すると、おもむろに乳首を摘まみ始めた。
「ちょっ!」
「気にしないでください、隆則さんはこのままリラックスしててくださいね」
「ムリっ!」
隆則の胸を弄るのに嵌っているのか、そこを弄られたことがないと知った日から執拗に触れてくるようになった。小さな粒でしかない、存在すら意識したことがない場所を擽ったり擦ったり、時には摘まんで引っ張ったりしてくるのだ。
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