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第13話-5

「夕飯、できましたよ……どうしたんですか?」 「なっ……なんでもない」 「なんでもないって、泣きそうな顔してますよ……もしかして今日の打ち合わせ、嫌なことがあったんですか?」  些細な表情まで読み取られ隠そうと顔を反らせば、それよりも先に両手が頬を包み込んでくる。強くはない力で遥人の方へと向かされた。  君が女の子といたのを見た、とても親密そうだったなんて言えるはずがない。臆病な心がその言葉を押しつぶしなかったことにしようとする。言わなければこの関係は壊れない。知らないふりを続ければもうしばらくは遥人と一緒にいられる。  だから隆則は目を閉じ首を振った。 「本当になんでもない……久しぶりに外に出て目が痛くなっただけ」  下手くそな嘘をついて誤魔化す。 「本当にそれだけですか?」 「うん……心配させてごめん」 「ならいいですけど……明日目薬を買ってきますね」 「ありがとう……」 「しばらくモニター見ないほうがいいかもしれませんが、それじゃ仕事にならないですよね。気分転換にご飯、食べましょ」 「うん……」  頬から離れた大きな手が力ない指に絡まる。誘われダイニングテーブルに着くと、夜になっても熱さが残る気候に合わせたさっぱりとした料理がそこに並んでいる。冷しゃぶの付けダレまで手作りされた料理はどれも美味しいはずなのに、今まではそれが遥人からの愛情だと感じていたはずなのに、今日はどれも味がしなくてまるでゴムを噛んでいるようだった。 「今日の打ち合わせ、どうだったんですか?」 「うん……相手も初めての分野だからアドバイスがメインだった」  詳細は語らない。守秘義務があることは遥人も分かっているだろう、それ以上は聞いては来なかったがなにかを怪しんでいるような雰囲気だけは伝わってくる。 「本当に仕事は順調だから……久しぶりに外に出たから疲れた」 「そう、ですね。九月も終わりなのに今日は暑かったですよね。隆則さんもっと体力付けたほうがいいかも。これからは時間があるとき散歩に出ましょう」 「うん……そうだね」  内容を理解できないまま返事をして、味のしない食事を無理やりに飲み込んでいく。いつもの半分も食べ終わらないうちに食欲はなくなり、手が止まった。 「ごめん、今日はあまり食べられない」 「夏バテなのかもしれませんね。無理に食べなくていいですよ、散歩ももう少し涼しくなってからにしましょう」

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