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第14話-2
『簡単だから焼きそばで行こうぜ』
無責任な先輩の一言で焼きそばを提供することになっているが、果たして大量の麺を野菜に効率よく混ぜ焦げる前に火を止める作業ができるのは何人なのだろうか。把握できないからこそシフトなどできるわけがない。
「難航もいいところ。俺以外に料理できるやつっているの?」
「あー、できるとしたら教授じゃない? 一人暮らしで炊事やってるって言ってたよ」
「教授に頼むのはさすがに無理だろ」
「えー、頼んじゃえばいいじゃん。むしろ堅物教授が実は料理好きなんていい客寄せになるって」
カラカラと笑いながら当日必要なプラスチック容器を詰め込んだビニール袋を教授のデスクに置く。そんなことをされては教授が怒るだろうと思いながらも敢えて口にはしない。今の遥人は人数の割り振りと隆則のことで頭がいっぱい過ぎて、他人に親切にする余裕はなかった。
「後は当日の麺を調達して終わりっと」
「……ソース、忘れないでくれよ」
「あっ、すっかり忘れてた! オ〇フクソースでいいよね。スーパーに行ってくる!」
こんなので本当に大丈夫なのだろうかと不安になりながらも、すぐに頭は隆則のことをへとスイッチしていく。
変だと思うのは彼の表情ばかりではない。今までは遥人が求めなければ自分から欲しいと言い出さなかったのに、仕事の打ち合わせで外出した日から、時間があれば隆則の方から誘ってくれるようになった。抱き着くのでもなくキスをするのでもなく、ただ遥人の腕を掴んで「風呂に入ろう」と不器用な誘い方だが、それがまた可愛くて遥人を有頂天にさせる。今までに遥人にされるばかりだったセックスも急に積極的になって口を使ったり自分から乗ってきたりするのに、いつも悲しそうな顔をしている。
始めはその積極さに興奮しすぎて余裕をなくしていたが、一ヶ月も続けば嫌でも気づく。
(そういや、あの日から俺、好きって言ってもらってない)
積極的に愛情をアピールしている自分と違い、恥ずかしがり屋な隆則は出奔した日に詰め寄ったとき以来、遥人のことをどう思っているのかを口にしてくれたことがない。必死に声を堪えようとするし、いつまでも蕾の奥を洗われるのを恥ずかしがる。キスだって声を出したくない時にせがむ以外は自発的にしてくれることがない。
「……もしかして俺、嫌われた?」
いや、それはない……多分。嫌っていたらあんなにしたがらないだろう。
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