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第15話-2
恋を終わらせるのは相手に限らないということを。
これ以上辛くならないうちに、自分から終わりにすればいいんだ。そうすれば心の痛みも昔のような辛さはないかもしれない。
もしかしたら遥人も隆則がそれを言い出すのを待っているのかもしれない。あんなにも毎日のように「好きだ」と言っていた相手に興味をなくしたとは口にできず、だから距離を置こうとしているのだろう。
それならこの関係を隆則が終わらせればすべて丸く収まる。また以前のように寂しくなればデリヘルボーイに電話をすればいいし、いつ終わるかわからない恋に怯えなくてもいい。
「ウィークリーマンションってどれくらいするんだろう」
いや、遥人を追い出すのは可哀想だ。
いくら家賃を払うから出て行けと言われても困ってしまうだろう。生活費は自分で稼いでいたと言っていた彼だ、これから就職活動が始まれば以前のようにバイトをしながらでは大変だろう。もし資格試験に落ちてしまったら余計に再度勉強する時間を奪いかねない。
「……俺が出ていけばいいんだ」
就職するまでこの部屋にいてもらい、今までのように部屋を管理するためのバイト代を出してやれば問題ないだろう。それだけの貯金はあるし、今以上に仕事を増やせば収入面での心配はいらない。
「そうだ、俺が出ればいいんだ。なんでもっと早く思いつかなかったんだろう」
隆則はテレビをつけっぱなしのまま早速部屋へと戻り、自分が開発に携わったサイトにアクセスし賃貸物件を探し始めた。
どうせフリーランスで家から出ない生活だ、念のためクライアントが集中している渋谷へのアクセスがいい場所なら都内にこだわる必要もない。パソコンと服だけあれば生活できるだろう。エアコンが備え付けの物件ならありがたいが、なければ買えばいいことだ。
「へー、これだけ離れてれば家賃四万からあるんだ、これならウィークリーマンションよりも安い」
生活圏が重ならないほど遠くへ行けば遥人が女の子とデートしている場所に出くわすこともないだろう。一人何も考えず仕事にだけ没頭して彼が卒業するのを待ち、でるのと入れ替わりに戻ればいいだけだ。几帳面な遥人のことだ、部屋を汚すことはしないだろうし無茶な使い方はしないだろうから、安心して管理を任せられる。
「家具は最低限あればいいか……あ、この部屋のをそのまま持ち込めば生活できるか」
どうせ自炊できないのだからキッチンなんてなくてもいいし、周囲に飲食店があれば助かる。そうなるとなるべく駅に近い方がいいのかもしれないと、どんどんと条件を絞り込んで物件を探していく。
遥人が卒業するまでの間だ、築年数に拘らなければ安い物件はいくらでもあった。
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