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第20話-5

(一度リセットしてもらえてよかった)  あのまま関係を続けていたらどうなっていただろうか。遅かれ早かれ一度離れていたに違いない。  隆則も一緒にいたいと思ってくれたのか最短で手配したのだろう、翌々週末には隆則がこの家に戻ってきた。  本当に荷物を運ぶだけの引っ越し業者しか手配ができず、二人で梱包を広げていく。 「……これが噂の……」  いくつもある同じ柄の段ボールを数個開けた時、中心に隠すように違和感しか放たない袋がありそれを開ければ、泣きながら教えてくれた淫具がそこにあった。隆則の説明の通り透明のシリコンで作られたようなそれはスイッチを入れるとモーター音と共に淫らな動きを始める。 「どうし……それっ!」  背中合わせで作業していた隆則は、音に釣られて振り向き遥人の手の中にあるものに気づいては一気に挙動不審になった。 「かっ……かえせ!」 「……まだ使うつもりなんですか?」  もう自分がいるのだからこれは不用品だろうとゴミ箱にそのまま放り投げようとして、慌てた隆則に止められる。 「だめっ捨てないで、ハルトくん!」 「はい……なんですか?」 「あ……いや、それの……しょうひんめ-……」 「……まさかそれで買ったんですか!?」  Tシャツ一枚の無防備な姿の隆則が煽るように肌を染める。肯定としか取れない仕草に『そんな物』と怒っていたくせに嬉しくなってしまうのはなぜだろうか。商品名だとしても手を出さずにはいられないくらい自分は愛されていたのかと考えて、まだ梱包がたくさん残っているのににやけてしまうのを抑えられない。 「隆則さん、大好きですよ」 「いっ、今言う言葉じゃないだろそれ……」  少しずつ心を開いてくれているのかそれとも電話でのコミュニケーションを間に入れたからなのか、言葉が砕けてきてぐっと親密さを感じる。 「パソコンだけ先にセッティングしちゃいましょう」  下心満載の提案に、照れながらも隆則は頷いた。  ベッドの中で『ハルトくん』を咥えながらどうやって己を慰めていたのかを実践させられるとも知らずに。

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