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第21話-4
「そうですね……今年は帰ろうと思ってます」
「ぁ……そうか……。うん、そうだな」
肯定しながら泣きそうな顔になっているのを自覚しているのだろうか。
(無理して平気なふりしちゃって……本当に可愛いな)
今年はあることを計画している。それを伝えたら今にも涙を滲ませようとしているこの人はどんな表情になるだろう。
(喜んでくれればいいんだけど、まぁ無理だな)
「新年のあいさつと一緒に、隆則さんのことを話してこようと思って。……なので、一緒に行きませんか?」
「…………へ?」
言葉が頭に届いたのだろう、泣きそうに歪んだ顔が惚け、次第に真っ赤になっていく。
「おっおまっ……え? 何言いだすんだ?」
「だからね、まもなく公認会計士になる報告と一緒に、今まで支えてくれたのは隆則さんだって、恋人だって紹介しようと思って。だから一緒に行きましょう」
「むりっ! 絶対無理だから!」
「いいじゃないですか。うちの親どうせ気にしませんよ、息子六人もいるんですから一人ぐらいホモになったからと言って文句は出ませんから安心してください」
「いや……そういう話じゃなくて……君のご両親に怒られたら……」
「怒りませんって」
色々と考え始めたタイミングを狙って、自分のおじやを乗せた匙を口元に運んだ。
「あーん」
集中してしまった脳みそに現状の映像は映されていないのか、ぼんやりしたまま口を開ける隆則におじやを流し込む。
(これは楽しいかも)
いかにも甲斐甲斐しく世話をしているさまが気に入ってこれから隆則の仕事明けの楽しみにしてしまいそうだ。
「これから先も一緒にいたいっていう俺なりのけじめです。親公認なら隆則さん、もう不安にならないでしょう」
隆則が、ではない。本当は自分が不安にならないための手段だ。二人だけで完結してしまう関係に家族を巻き込むことで、まじめな隆則を逃さないという姑息な方法である。認められることによって彼に少しでも愛されているという実感を与えたいという気持ちも多大に含まれている。いつも遥人のためと家族に気を回して一人で張っていた肩の力を抜いてもらいたいのだ。家事だって慣れている方がやればいいと思って欲しい。
実はすでに家族への根回しは終わっており、反対されるどころか両親は今までずっと支えてくれたことや仕送りできるよう今も助けてくれていることに感謝しているし、弟たちは『兄貴に束縛されて可哀そう……絶対口やかましくあーだこーだ言われてるに違いない』と意味不明な心配までしている。
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