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【番外編】スピカの後味⑦*
景虎は、庄助の精を唇で吸い上げると、残滓の散る下腹を舐めた。掴んだ腰はじっとりと汗をかいている。庄助は整わないままの呼吸で、景虎の行為を咎める。
「やめろっ! 落ちたやつ飲まれんの、キモくてめっちゃイヤやねんからな……!」
「そうだったのか、すまない。もう飲んだ」
「もうイヤや変態、変態~っ!」
本気で怒って拙い悪態をつく唇に、つうと目尻から涙がひと筋、こぼれ落ちた。
力の入らない身体を折り曲げられ、大きく脚を開かせられた。
景虎は、濡れて萎えて小さくなった柔らかい陰茎をつまみ上げる。そのまま、今度は口の中にぱくりと全部含まれてしまった。
庄助は驚いてベッドの上の方に逃げようとしたが、腰を押さえつけられて動けない。唇で挟まれて引っ張り上げるように扱かれると、庄助はとうとう諦めてちいさく鳴きはじめた。
「はあっ、それ……つらい、んっん……あぁあっ! ぐぅっ……」
皮の内側を、剥がすようにぐるりと舌で舐められる。
今しがた精液を吐き出して敏感になっている鈴口は熱く、尿道に残ったものを吸い出されるだけで、電流のように強い快感が走る。
「気持ちよさそうだな」
「ちがぁっ……! イったばっか、イ……っ、た、つらいって……あ! うぅ゙う~!」
背筋が発作のように弓なりに跳ねる。とっくに気持ちよさは上限を突破して、痛いほどになっていた。
反応を確かめるように、ペニスを舐めしゃぶられながら、奥まった小さな穴に指が伸びてくる。撫でるように少しずつ割れ目を探られ、庄助は慌てた。
「あっ……そこ……」
菊座に、景虎の指先が触れる。いつもは硬く拒むように息づくそれが、指のほんの先にちゅっと吸い付くような動きをした。指を這わせると、ぬるぬるとしたゼリーのような感触がある。
「……これは」
庄助は真っ赤な顔をして身体を起こした。
「や……違う……っ! どうせ、するやろなと思って! それやったらちゃんと風呂でキレイにしたほうがええし、濡らしてたら痛くないし!」
なんてことだ。景虎は目を見開いた。
あの、いつも嫌だ嫌だとうるさく泣き喚く庄助が、自らセックスの準備をしてきているなんて。自分を受け入れるために、抱かれるために一人でほぐしたのかと思うと、胸が詰まる。
何ていじらしくて、いやらしい生き物なのだろうか!
「俺かて別にそんなっ……ただ、いつもお前がめちゃくちゃやから用心して……」
景虎は何も言わず、まだ何事かをぶつぶつ喋り続ける庄助の身体を、ベッドにまたゆっくりと押し倒した。
「聞いてんのかおいっ!」
「聞いてる。俺は今感動してるんだ、庄助。愛してる……お誕生日おめでとう」
「なんで今言うねんっ! おかしいやろ……んわあっ!」
再度開かせた庄助の股間に顔を埋めると、景虎は陰毛をざり、と舐めた。そのまま、何度も毛繕いみたいに流れに舌を這わせ、恥ずかしさでぴくぴくと反応する庄助のペニスをもう一度咥えた。
「ア……!」
口腔内をすぼめて密着させ、押し引きするように舐める。半ば強制的に与えられる強い性感に、庄助は大きく身震いをした。
フェラチオと一緒のタイミングで、狭い胎の壁に沿って中指が入り込む。爪が当たらないように指の腹で探って、ペニスの付け根の裏側に当たるそこになだらかな膨らみを見つけては、揺らすように押す。悲鳴のような嬌声が、空気を求めて反らした庄助の喉からせり上がった。
「ィ、ぅくっ……! ひっ、そこ、そこやめっ……あはぁ……っ!」
口の中で、庄助の陰茎が硬さを取り戻すのがわかった。指全体を出し入れさせると、戸惑うように蠢く孔がたまに空気を飲み込み、そこに奥から溢れてくる潤滑ゼリーが混ざって、ちゅぽちゅぽと吸い付くような音を立てた。
「ゔぅ……あかんてっ、もう無理やってえ……っん゙み……っ、ぁああっ」
中を掻き回すと、庄助の足先がガクガクと震えた。尻を浮かせてふくらはぎで踏ん張って、自分ではどうしようもない異物感と快感に耐えている。浮き出た腰骨から汗が流れて、髪の色とは違う、地毛の黒の中に落ちる。
庄助の指が髪に触れ、頭皮に軽く爪を立てる。景虎はたまらなくなって、バスローブを脱ぎ捨てた。
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