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第三幕 七、脳まで愛して⑥*

「ンっう……! はぐ、ぐぅっ……! うぎゅ、んんっ!」  腹の奥がむずむずして、腰が勝手に動いてしまう。  恥ずかしさに首を振るが、景虎の指はそんなことでは止まってくれない。生地の上から人差し指で何度もカリカリと引っかかれるのは、気持ちいいのに絶頂できない拷問みたいで辛かった。 「やあっ、やあぁ……あかんて、イヤや……」 「ん……触ってるとすぐ乾くな。もう一回濡らしていいか?」 「い、いやって……言うて、い゙っ……! あ゙はっ、ぅ゙、あぁあ……」  今度は舌先を尖らせて、両方丹念に見せつけるように形をなぞられる。唾液が染みて浮き出る突起が恥ずかしくてたまらなかった。景虎の舌が動くたびタンクトップがさわさわと動いて、布が触れている首元や腹までくすぐったい。  庄助の下着は、もうびしょびしょに濡れている。  いつもと違うシチュエーションに興奮してしまっているのか、まるで女みたいに大量に溢れてくる。垂れたカウパーが内股の方まで伝ってきているのが、なんとも気持ち悪かった。  乳輪ごと根本をふにふにと摘んで刺激されて、庄助は気持ちよさに涎を垂らした。 「あ゙っ、ふぅ……んむっ、ゥ……やめ、しつこひ、へぅ……」  キスをされながら不規則なリズムで弾かれて、潰すように押し込まれる。庄助はとうとう景虎の腕に爪を立てて抵抗し始めたが、景虎はお構い無しに乳首をもてあそんだ。 「いやや、もっ……もうカゲえっ、お願いやから……っ! や……っ」  立っていられないくらいに、庄助の太ももがガクガクと震える。しつこく触っているからとはいえ、ここまで感度がいいのは自分の調教の賜物のようで気分がいい。  懇願されても景虎の手は止まらず、小さな乳首の先端を爪の先で穿るように何度も引っ掻いた。 「っ、あぁ゙……! うぐ、あっ……ひぅう……っ、ん……」 「なあ、庄助。……俺が嫌いか?」  あの晩言ったことを気にしているのか、景虎は少し不安そうな声で尋ねた。黙り込む庄助の腋に鼻先を差し込んだ。  乳首への愛撫はそのままに腕を上げさせ、窪んだ腋窩(えきか)に舌を這わせた。恥ずかしそうに身じろぐ庄助の、涙で束になった睫毛や荒い息が愛おしかった。 「し、知るか! そんなとこ舐めんな、おまえなっ……ほんまに変たっ、いぁ」  下から上に、汗を舐め取る。庄助の汗はほんのりと乳臭い。庄助の体内を巡ったものだと思うと、どんな体液も愛おしくなる。啜るみたいに余すことなく、腋を愛撫した。 「教えてほしい。本当に嫌いなのか?」 「……うぅ~っ」  庄助は呻いた。言葉にしたくなかったのだ。持ち合わせている語彙でそれを表現しても、どうあがいても陳腐にしかなり得ないから。  それに、きっと言葉に出すことで自覚してしまえば庄助自身も溺れてしまいかねない。その言葉の響きの甘さに、心地よさに。流されやすい庄助がまだ必死に耐えているのは、自分の心を守るためだ。

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