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第三幕 七、脳まで愛して⑧*

「んん……ぅ! カ……ゲ、ンんっ……ひいっ」 「痛いか……? さすがにキツいな」  先を挿れたまま馴染むまで少し待とうと、手持ち無沙汰に尻の肉をぷにぷにと弄ぶ。たまにきゅうっと雁首を締め付けてくるのが可愛らしかった。 「ぅ゙……ああ、んっ……っ」  入口だけ無理矢理開かされて、庄助の奥は快感を待ちきれずに焦れる。少しくらい痛くてもいいから奥まで突いてほしかったが、そんな恥知らずなことを言えるはずなかった。  ふと、突然奥の壁がガタンと音を立てた。庄助はひっ、と息を呑んで固まった。 「……あーダメだわ、荷物で見えん」  男の声と同時に、ガンガンと薄い壁を叩く音がする。光取りの窓に誰かの影がチラチラと写る。壁の向こう側から上って、中を覗こうとしているようだ。脚立か何かを立てかけて上っているのか、影が揺れるたびにプレハブ小屋全体が振動するようだった。  景虎と繋がったまま目を見合わせて、じっと息を潜めていると、庄助の手をついているドアのノブが目の前でガチャガチャと回された。  庄助の鼓動の回数がにわかに上昇する。一度緩和した緊張状態が見る間に戻ってきて、呼吸が限りなく浅くなる。 「どうする? 鍵壊してみる? 道具積んでたよな」  とうとう物騒な言葉がドア一枚隔てた外で聞こえたので、庄助は振り向いて景虎の顔を見た。どうしよう、と目で訴える。挿入されていることも忘れて不安そうな顔をする庄助の頭を、景虎はいたわるように優しく撫でた。 「大丈夫だ」  唇がそう動いた。  ふと、燻された薬草のような独特の匂いが外から入り込んできた。 「いや、そこまでしなくていいヨ~」  その後を追うように、ずる、ぺた、ずる、ぺた……と引きずるようなスニーカーの足音が聞こえる。足音は庄助たちの立つドアの斜交い、フェンスの位置まで移動して止まった。間近にいる人間の気配に、庄助の身体はますますこわばった。 「さっきのラーメンマンや……」  この薬のような匂いは、先ほど辮髪の男が吸っていたタバコの煙の匂いだ。 「俺たちはあの子を連れてこいって言われてるだけだからネ……リスクは犯さなくていんじゃない」 「でもよぉ……」  ドアのノブを掴んでいた男は、つまらなそうに離れていった。ドアのほんの微かな隙間から、庄助はそっと外を伺った。辮髪を含め四メートルほど向こうに、二人、三人と男が立っているのが見える。 「あんまり派手にやると、ケーサツが出てくるでショ。そしたら本業がやりにくくなっちゃう。本末倒置(ベンモーダオチー)だよ」 「はあ、キレイな女ならともかく、あんな猿みたいガキ捕まえるの、やる気出ねーわ」  猿みたいで悪かったな! 庄助の頭にかっと血が上った。フルチンかつ尻を犯されていなければ飛び出していって殴りつけているところだった。  命拾いしたな、そう小声で吐き捨てるのを聞いて、景虎は状況も顧みずに吹き出しそうになった。 「ふふ……」 「おま、笑うな……ひっ!?」  景虎は腰を動かした。少しだけ抜いて勢いをつけると、さっきより奥に挿れる。庄助の背中がわなわなと震えた。

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