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第三幕 十四、艱難、汝を✕✕にす③*

 小指だけと言わず、景虎の手の全部の指を折ってくれればよかったのだ。そうすればこんなひどい目に遭わなくて済んだのに。  お門違いだとわかりつつも、庄助は国枝の中途半端さを恨んだ。  一日が長くて、ほんとうに疲れ切っていた。ボクサーパンツの下でじわりと皮膚が汗をかいて、尻の割れ目まで伝った。 「犬みたいに足開いて座れ」  頭上から降ってくる低い声に命令されるまま、庄助は恐る恐る膝頭を開いた。足の裏に触れるざらざらした樹脂のタイルは、同じ浴室でもさっきの廃ラブホのものとは違う。慣れ親しんだ家の風呂場なのに、シチュエーションのせいで別物のように感じる。 「指でゆっくりほぐしてやりたかったが、この通り怪我してるからな。それで我慢してくれ」 「あ、ぅぎ……んんぅ」  尻の穴にバイブレーターが刺さっている。緩い振動なのに、姿勢を維持するのが難しいくらいに重くて甘い。直腸の中は敏感で、中のモーターがとんとんと前立腺をノックするような動きを、ありありと拾ってしまう。  ひどい有様だった。屈辱という点では、さっきの水責めよりずっと上だった。  庄助は今、尻の穴におもちゃを挿れられている。足を開いて腰を落としたヤンキー座りのような体勢で、このままでは抜けてしまうからと、一度脱がせたパンツをまた履かせてバイブを固定している。まだ先ほどの結束バンドは外してもらていない。  素っ裸の景虎は、見事に鍛え上げられた肉体を、浴室の淡いの電灯の光の下にさらしている。 「腹の中キレイだったな、何も食ってないのか?」  シャツの上から、突然腹部に触れられて、庄助は驚きでびくっと飛び上がった。洗浄されて空っぽになった腹を、愛おしげにふにふにと撫でる景虎の手のひらが、じんわりと熱を持っている。 「おまえ……っ、熱、まだあるんちゃうん、か」 「……驚いた、庄助は優しいんだな」  景虎は庄助の臍の下を少し力を込めて圧迫しながら、耳元に唇を寄せた。 「今から朝までケツの穴閉じる暇もないのに、人の心配してる場合か?」  これから起こることを思い知らされて、庄助の身体中に鳥肌が立った。 「うぅ~っ……!」 「正式にウチの構成員になって抗争相手に捕まったら、さっきみたいに拷問されて組のことを喋れと言われることもあるかもしれない。酷いことをされても、庄助はちゃんと我慢できるのか、俺はそこのところを見たいんだ」  こいつは本当に最悪の変態だ。テストなんて建前に決まってる。こっそり買っては隠しているアダルトグッズを、おおっぴらに庄助に使いまくれるチャンスだと思っているに違いない。 「嘘つけ、ボケ……」  目を閉じてついた悪態に、景虎は小さく息をついた。浴槽の縁に腰をかける軋んだ音の後に、庄助の両肩に何かが触れた。滑らかで筋肉質なそれはおそらく、景虎の腿だ。股座の間、両脚で身体を挟まれる形になった庄助は、厭な予感に震えた。

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