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【番外編】庄助の有意義な休日⑧*

 腹の内側が焦れて熱い。挿れられて拡がって閉じられない穴が、ずっと切なそうに収縮している。分厚い刺青の胸に、俺は軽く頬を擦り付けた。 「さっきイったばかりだろ?」 「……そう、やけどっ」 「ああ、そうか。一人でチンポしごきながら想像してたんだもんな、ずっと」  カゲは、勝手に納得したように呟くと、俺の下腹を愛おしそうに撫でた。 「庄助は、ケツの穴で思いっきり、メスイキしたかったんだよな?」  悪そうな含み笑いと、熱い吐息。一度ギリギリまで抜いて、穴の縁に亀頭を引っかけるようにして奥に狙いを定めると、カゲは少し切羽詰まったような甘い息を吐いた。 「あ……あっ、待っ」  カゲの長い前髪が揺れた。次の瞬間、一気に奥に叩きつけられた衝撃で空気が漏れた喉から、ごぎゅっと変な音がした。 「んぅ゙ッ……、お゙……! は、ふぁ」  息をつく暇もなく、次の衝撃がくる。今度は腹側、前立腺をゴリゴリと責め立てながら入ってきて、奥の奥、それ以上入らない突き当たりまで侵す。脳内に火花が飛ぶ。腹に生暖かい液体が落ちてきたと思ったら、俺の吹いた潮だった。 「や……かげ、うご、っ……!? あ、それ、あかん、あかんっ……やめ、ろっ……!」  前立腺のしこりに、ぐっと亀頭を押し当てて潰してくる。その圧よりもその後の緩和が辛くて、俺はもがいた。 「や゙ヒ……っ、んぐぅう~っ」  圧迫から解放されたそこから、血流に乗って快感が全身に広がる。指先まで到達して軽く絶頂する、というところで、もう一度ぎゅっと前立腺が押し込まれた。あかん、次緩められたらきっと、もっと深いのが来てしまう。俺はゆるくイキながら懇願した。 「い、今はいややっ! 待って、カゲ……うあ~っ!」 「……ナカ、搾り取るみたいに動いてる。エロい穴になったな」 「そんな、そんなっ……ほんまに、や、め」  カゲの腰が引けていって、排便みたいな危なっかしい感覚と同時に、気持ちいいのが身体中に広がった。背中の毛穴がぶわっとなって、悲しくないのに涙が勝手にぼろぼろ出た。 「……っあぐ、ん、ひきゅっ……! ゥ……!」  気持ちよくて声が出ない。頭が真っ白になる。さっきより深くイってる。もうこうなってしまったら、なかなか戻ってこられへん。完全にアホになる。 「ふふ、勃ちきってないのにイッてる。ナカでばっかりイッて、もう完全にマンコだな」 「ま、マンコじゃないっ、あっ、あ゙っ、ア~~! ……っもうそこ、あかん……っ! イひ、ィっ」  逃げようと横を向いた俺の太腿を、カゲは抱え上げて肩に担いだ。片足だけ浮いた状態で固定されて、めいっぱい掘られる。体位が変わって、さっきと当たるところが微妙にズレる。それが新鮮な刺激になって、また俺はイッてしまう。 「あ……イッてる、イッてるって、カッ……ひっ、あ! あ゙っう、んううっ」 「知ってるか? 前立腺には子宮の名残があるらしい。だから、ここで感じるのは庄助のせいじゃない」 「あンっ、やあ……っ! あほか、お前のせいやんけ、ぜんぶっ! ふざけ、ン……あ、あ゙ぅ゙~~っ!」 「今日はえらく締まるな、庄助。はあっ……俺も……出したい」  言いながら、カゲは眉をしかめる。ナカで一瞬ぐっと膨らんだ気がして、その後またドクドク動き出す。カゲの脈が“子宮の名残”とやらに当たって蠢く。まるで腹の中にもう一個心臓ができたみたいや。  ゴムの中に精液を吐き出すたびに、カゲの割れた腹筋に力が入って、伝った汗が刺青の輪郭を滲ませては下腹に消えてゆく。  女の子も、射精後の男を見てこういう気持ちになるんやろか。愛おしいような、ちょっと笑ってしまいそうになるような、こんな気持ちに。 「カゲ……」  カゲが俺をこんなにしたんやから、責任取れって言いたかった。でも、ほんまにそれを言ったら、こいつはあっさり人生を俺なんかに捧げてしまうかもしれない。だから言えなかった。  こういうのはもっとちゃんとしたヤクザになって、俺が自分のシノギで食えるようになってから言わなあかんことや。  だって、責任取ってカゲの人生を俺にくれって、それはほぼプロポーズちゃうん?  ……ああもう、気持ちよすぎてようわからん。  カゲとくっつくの気持ちいいって、それしか考えられん。

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