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第四幕 八、はらわたと境界線①*
景虎に一体、どんな事をされるのか。いろいろ想像していた庄助だが、まさかこの歳になって、読んで字のごとく尻を叩かれるとは思わなかった。
こんなのはお仕置きとは言わない、ただの職務怠慢だ。遊んでんちゃうぞ。
暑い。汗は流れるほどではないが、くっついた肌と肌の間でぬめって、不快指数が高かった。
堤防にそって停めてあった作業車に連れ込まれ、庄助は辱めを受けていた。
本来であれば重力に従い垂れるはずの涎が、唇と同化したようなテープの粘着面に阻まれて、口の中に生温かく戻ってくる。
波のさざめきしか聞こえない静かな車内に生肌を打つ音が響くたび、庄助の白い背が跳ね上がった。
後部座席を倒したフラットな荷室に、景虎が身体を折り畳むように胡座をかいている。先ほどのハイエースまでとは行かないが、いつも仕事で使っている作業車は、荷物さえなければ大人が一人二人寝転がれる程度には、そこそこ広い。
庄助は、景虎の股座に頭を突っ込む形で、スカートを捲った尻だけを上げさせられている。もちろん手はまだ結束バンドを外してもらえていない。屈辱極まりない格好だ。
きつい姿勢に皮膚と骨が軋む。少しでも楽になりたくてずり上がったその尻を、景虎の右の手のひらが打つ。パシン! と気持ちのいいインパクトの音が鳴った。
「んんぎゅっ……!」
さっきから叩かれ続けて麻痺した表皮は、実はもうあまり痛くはなかった。それでも衝撃で、息が漏れる。裸の尻っぺたはスパンキングの衝撃に、ジンジンと放熱しているようだった。
こんな場所で、こんなこと、異常だ。震える庄助の反対側の尻に、もう一度平手の衝撃が来た。
「逃げるな」
景虎の声は冷たかった。せめて口のテープを取って、言い訳くらいさせてくれると思っていたのに、甘かった。
「ひゅ、む……んゅっ、んんぅ」
叩かれた後の熱持つ肌を、景虎の爪の先が優しく這う。平手よりもそっちの方が辛かった。くすぐったくて、腰が逃げるようにくねる。涙の滲んだ視界に、運転席に雑に置かれた景虎のマカロフと、窓ガラスの向こうの暗い夜と海が映った。
「少し見ない間に、随分可愛くなったな。ヤクザになるのは諦めて、女になるのか?」
「んん……!」
「そうやってケツ振って、タニガワを誘惑してたんだな」
庄助は必死に首を横に振った。尻たぶを手のひらで包まれて、ふにふにと揉まれる。景虎の手が冷たいのか、自分の尻が熱いのか。もはやわからなかった。
「き、うぅ……っ」
漏らして脚に流れた尿は、驚くべきことに先ほど、景虎が全て舐め取ってしまった。
濡れたままだと車が汚れるからと野外に立たせたまま、くるぶしから柔らかい内腿まで、ときにスカートを捲り上げて、余すことなく。その時からもうプレイは始まっていて、抵抗の手段を封じられていた庄助は、変態すぎる行為にも泣いて悶えるしかなかった。
「確かに、“ギュッと上がった丸いヒップ”だな」
景虎は納得したように何事かを呟いて、なだらかな二つの山をぱっくりと割り開いた。閉ざしていた穴に外気が触れる。内部の粘膜がひやりとしたエアコンの空気の流れに当たって、ぴくぴくと二度ほど、大きく収縮した。
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