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第四幕 八、はらわたと境界線③*
場所を変えて噛みつくたびに、庄助の肌がびくんと跳ね上がって、乳臭い汗と興奮の匂いがした。子供みたいな色の尻の穴と会陰が、薄明かりに浮かび上がる。
「ん゙んんっ、ゅ、ひうう」
脚の間でふるふると揺れる陰嚢を指の背で撫でると、庄助は嫌々と首を振った。頑丈にピンで留めているのか、なかなかずれないウィッグの後ろ頭だけを見ていると、本当に女を辱めているようだ。
大きく開いたドレスの背中が、汗ばんでいる。後ろ手に戒めているからこそキレイに浮き上がる肩甲骨が、やけに扇情的だった。
自分以外の他人に、庄助が肌を見せたことが憎らしい。しかもパンツも履いていない。野球拳に負けてタニガワに奪われていたことは、盗聴していたから知っている。
本気で殺したくなってきた。庄助とタニガワのどちらを? もちろん、どちらもだ。
誰に唆されたのか知らないが、敵対組織の男を誘惑しようとするなんて、許せない。ガキみたいな顔して、淫乱のくせに。
自分が庄助をそのように仕込んだとはいえ、腹が立つ。これはどうにもならない独占欲だ。
怒りは性欲と暴力性になって顕現する。庄助の甘いすすり泣きが景虎を興奮させた。
尻を叩いて噛みつき、存分にいじめた後は、痛みと恥辱に震える庄助の身体を抱き上げ、自分と向かい合うように腰の上に乗せた。
尾てい骨に勃起したペニスを押し付けると、庄助はびくりと身体を縮こまらせる。貼られた粘着テープ越しに唇を舐めてやると、切なげに鼻をくんくんと鳴らした。
今はこうして大人しくしているが、庄助がいくら痛い目を見せても折れない人間だということを、景虎は知っている。
自分を陥れようとした向田や廣瀬 ヒカリと普通に仲良くしたり、何度危ない目に遭ってもヤクザとして出世したいと言ったり。
まるで炎に近づきすぎて火傷までしているのに、まだそれ以上の熱さを求めているようだ。庄助がもし動物だったら、きっと長生きできない個体に違いない。
ウィッグの人工毛が、頬に数本くっついている。アイラインが涙で滲んで、二重瞼のラインをうす黒く染めていた。
ズボンの中からペニスを出して、庄助の尻の間に擦り付け、会陰を押し上げる。口の布テープのせいで荒い呼吸が逃しきれず、たまに頬がぷくぷくと膨らむのが可愛い。
「勃起してる」
庄助の下腹部を指さす。薄手のタイトスカートを持ち上げて、庄助のペニスが勃起しているのがはっきりとわかる。慌てたように腰を捩ったのを、がっちりと押さえ込み、布越しの勃起を指で丹念になぞった。
「ん、ふぅっ……! ぉ……うう」
「ケツ叩かれて齧られて、痛いことされて……気持ちよかったんだな?」
庄助は違う、と首を振った。
スカートを浮かせる先端をカリカリと爪で引っ掻くと、喉の奥からくぐもった呻き声が聞こえる。何度もいたずらに撫でてやりながら、ドレスの首元を引き下げて胸を露わにした。左の方の乳首に、絆創膏がぺったりと貼られているのを見つけた。
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