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第四幕 八、はらわたと境界線⑦*

「……てか兄ちゃんじゃなくて、俺を連れてけよ、カゲぇ……なあって! 置いてくんやったらまた勝手なことするからな!」 「ほんとにお前は……」  これだけ陵辱されながらも他人を心配している庄助の姿に、景虎は苛立ち、舌打ちをした。大きく息を吐くと、キャンキャンとわめく頭を押さえつける。いつまでも自分勝手で腹が立ってくる。  腰を押しつける角度を変えて試行錯誤を繰り返し、何度目か。庄助が息を止めて、軽く下半身に力を込めた瞬間だった。  ぐぽっと一段階、柔らかで狭い壁を越えた最奥に、景虎の先端が入り込んだ。 「おあ゙っ……!?」  妙な感覚に、声が出た。  後から脂汗が湧いてくる。圧迫感と恐怖で、吐き気すらこみ上げてきた。これはもしかしたら、結腸まで入ってしまったのでは。  今までもセックスの際に、景虎が奥まで入れたがることはあった。そのたびに怖いからダメだと伝えてきたのに。何の心構えもないままに侵入されて、庄助は身体を強張らせた。 「あっカ、……カゲ……っ!? な、なんか、ナカっ……奥、あひ」  きゅっと締め付けた胎内がどくどくと脈打つ。括約筋と違って、自分の意志では締めつけられないような奥に、景虎の存在を感じる。 「や……な、ぁっ……抜いて……っ」  身を捩るのすら恐怖だった。景虎は何も言わずに、腰をグラインドさせた。 「あ゙」  無理やりこじ開けられていた弁のような肉のひだが、抜けてゆく雁首に引っかかって裏返る。やっぱり、入ったことのない身体の中まで届いている。庄助は急に恐ろしくなって、過呼吸のように細かく息を継いだ。 「言うことを一つも聞かないな、庄助は。だったら俺も、聞く必要ないだろ?」  もう一度頭を抱き込まれて、庄助の頬と景虎の分厚い胸が密着する。今度はやけに呆気なく、先程の奥まった場所まで侵入されてしまった。 「ぎ……うぁあ……っ! お゙ぁ……あかんっ! 奥、おくっ! 入ったらあかんとこ入ってるって! あっ、うぅ、ゔーっ……!」  泣き喚いても止まらない。かえしのようなひだに亀頭を引っかけるように、ガンガン責め立ててくる。景虎の凶悪な武器に、今まさに内臓までの侵入を許してしまった。 「……すごい……庄助の、はらわただ。あったかい。入口、柔らかくてコリコリしてる。好きだ……」  景虎は耳元でうっとりと喋った。肉を掻き分けて、先っぽに出たり入ったりされると、内臓を直接弄られている感覚に総毛立った。限界まで押され、尻に景虎の陰毛がぐいぐいと触れる。力が入らない、息がうまくできない。 「お……あ、あ゙……っ、くるひ、やめっ……へ……っ!」  怖かった。結腸を犯されていることよりも、未知の感覚に脳の処理が追いつかないことが。  知らない間に涙が流れた。痛くはなかったが、入ってしまったショックが大きい。 「ぬいっ、抜いて……ああ゙っ、じぬっ、ぅ゙ぅ~~っ、やあぁ~~……」  何度も引っかかりを擦られるうちに、ビリッと頭に電気が走るような感覚があって、庄助は驚くほど静かに絶頂した。さっき出したばかりなのに、精液がとくとくと溢れてくる。あっけないけれど深い絶頂に、身体中が震えた。

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