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【番外編】ミーツ・シーオッターズ・ハッピーラブ・ジャーニー⑩*

「ふやぁ、あっ……イくっ! ああぅっ、あ~……っ!」 「終わってないぞ」  精液の出ない絶頂で力の抜けてゆく腰を上げさせ、今度は抵抗できないように後ろで両手首を一纏めに掴んだ。そのまま、先ほどと同じように、ペニスの先端を手のひらで擦り上げる。 「んみ゛ぃっ……! や、イッて、そこ、むり……っ、ア、ゆるひ、やめ、でる」  快感に脳を溶かす庄助の姿に、ゾクゾクする。ダメ押しのように熱い胎内を怒張するペニスで掻き回すと、庄助は我慢ができなくなってとうとう、勢いよく潮を吹いた。バスタオルにぱたぱたと、透明な液体が滴り落ちる。 「ひゅぐ……うああ……」  搾り取ろうとするように何度も締まる胎内が、熱く蕩けている。突きほぐした肉は柔らかく、まるで挿入して繋がるのが当然の器官のように、ぴったりとペニスを受け入れていた。 「庄助のナカ、もうすっかり俺のカタチだ」 「……っ、は、あっ。当たり前や、こんな変態の物好き、お前だけや……」  肩越しに呟く声が、震えている。「お前だけや」という言葉に、景虎の耳がじわりと熱くなった。  なんて可愛いんだ。好きだ好きだ。願わくば今日のこと、忘れないでほしい。  自分はいつの間にこんなに、贅沢になってしまったのだろうか。景虎は恐ろしかった。最初はそばに居るだけで良かったのに。今では庄助の心の中に、自分の場所があることを望んでしまっている。  幸せは麻薬だ。浴びているうちにどんどん麻痺して、もっと欲しくなる。失ってしまえば、身を切られるより辛いはずなのに、求めるのをやめられない。  俺も、破滅するだろうか。  だってもうとっくに、中毒だ。 「あっ、は、はげし……んおっ」  景虎が絶頂を目指し、動きを速めた。突き破らんばかりのピストンを受け入れる、獣のように四つ這いの庄助の反った腰の窪みに、汗が小さな池みたいに溜まっている。  遠慮のない律動に、穴の中に空気が入り込んで潰されて抜けて、恥ずかしい音に変わる。庄助の身体が奏でるあらゆる音が、いやらしくて甘美だった。  愛おしい庄助に溺れて破滅するなら、かまわないと思った。  尿道を駆け上ってくる精の気配に、景虎は身を震わせる。 「庄助、庄助……愛してる」 「あぁあ……もうめちゃくちゃに、せ、せんとって……ひんんっ、あたま、変になるっ……!」  中で膨れ上がる景虎のペニスに責め立てられ、庄助は何度もゆるくナカイキした。これ以上気持ちよくなったら、狂ってしまう。景虎の吐精、すなわち解放の瞬間を今か今かと、揺さぶられながら待った。 「あひっ!?」  しかし、何を思ったのか景虎はペニスを引き抜いた。突然栓を失った肛門が、驚いたようにぱっくりと開きっぱなしになった。 「すご……ナカ、丸見えだ。濃いピンクでツヤツヤしてて、庄助は内臓も可愛い……」  ぱちんっ、と、背後でゴムを外す音がする。庄助が驚いていると、ペニスを自らしごいて、だらしなく口を開けた穴に向けて射精した。 「え……ナカっ……、なんで、あ、あ……っ!」 「奥に出してないからセーフだろ……はあっ、庄助のケツの穴、俺の精液ごくごく飲んでる……」  景虎は感動したように言うと、滴る精液を穴の中に指で塗り込んだ。半ば意識を飛ばしたように朦朧とする庄助が、舌足らずな声で訴える。 「やぁっ……! 見んなぁっ……もうあかん、あかん……」  緩んでぬかるんだアナルが、はしたない音を立てて指を迎え入れる。必死に恥辱に耐える庄助の涙に、尿道に残っていた精液が押し上げられてくる。 「ああ、お前がエロすぎてまだ出る……ほら、こっち向け」  うつ伏せていた庄助の身体を裏返すと、上半身に跨り、もう一度ぬちぬちと音を響かせて扱く。景虎が息を詰まらせると、白濁が庄助の顔をドロドロに汚した。一回目よりも長い射精だった。 「ぅ、はひ……っ」 「ん……っ、ああ、庄助……」  鼻から落ちるザーメンにべったりと濡れた唇にペニスを押し付けてやる。庄助は涙を一筋流しながら頭を起こし、ゴムの匂いのたつ先端にちいさくキスをした。 「カゲのあほ……」  ぐずぐずと、鼻水と一緒に精液まですすっている庄助の泣き顔を見ていると、俄然もう一度犯したくなった。  が、庄助がコンドームを一パックしか持ってきていなかったので、諦めて部屋のシャワーを二人で浴びた。身体を洗ってやりながら、何で一つしか持ってこないんだ? と景虎が問うと庄助は、当たり前やろ! とキレた。  熱く気怠い身体を畳の上に放って、二人で眺める窓の外に、夏の星が見える。海からあがる蒸気で、光が滲んでいるみたいに映る。  知らない場所で眠るのは、新鮮だ。汗が冷えるとどちらからともなく身を寄せ合って、二つある布団のうちの一つでくっついて眠った。

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