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第四幕 幕間、いつかの寝物語
しまのからだをくさむらにかくしながら、かれはゆく。
ぬかるみをふみしめて……
あ。ぬかるみ、っていうのはねえ。……ん〜。このあいだ、病院の前の公園で、おっきな滑り台滑ったよね。その時に……ふふっ、景虎の足が柔らかくて濡れた地面にはまっちゃったでしょ。あれが、ぬかるみ。えと、どこまで読んだっけ。
そうそう。えと……ふつかまえにくったにくはとうに……ん、なに? また動物園いきたいの? 好きだねえ。いいよ、日曜日にママと一緒にいこう。お弁当作っていこうか。おにぎりと、ウインナーと唐揚げと……唐揚げはきっと冷凍だけど。
無理しなくていい? 確かに、ママのお仕事は土曜の夜がいちばん忙しいけど……んん、じゃあ、どうしても二日酔いでしんどかったら、買っていくことにしよ。ふふ、優しいねえ〜、景虎は。
ねえ、あなたに気を遣わせてばっかりでごめんなさい。ママ一人だとどうしても、やってあげられることが少ないよね。
だからってわけじゃないけど、景虎はさ……お父さんが欲しくない?
んと、そだね。素敵な……思い切り甘えられるような、頼もしいお父さんがいたら、景虎は嬉しい?
最近ね。店のお客さんなんだけど、景虎のお父さんになりたいって言ってくれるおじさんがいてね……。
だめ? んふふ、そうだよね。ママも、景虎さえいてくれたら幸せ。それはそうだよ、この先もずっと変わらないよ。
……とおいちからきたあくまは、やわらかくてあったかくて、ねどこのにおいがする……かれは、あくまをあいしてしまった。
眠くなってきた? ふふ、ママもだよ。
このお話の虎さんみたいに、景虎もいつかたった一人の大事なひとに会えるといいね。手離したくないくらい、大事な誰かに。そしたらね、ママに紹介してね。楽しみだなあ。
そろそろ寝ようか? おててつないで、うふふ。ラッコさんみたいだねえ。
……ママは景虎が大好きだよ。宝物だよ。ずっと、ずっと大好き。
いつまでもいっしょにいられたら、どんなにすてきだろう?
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