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第四幕 十六、飢えと慕情⑦*
「は……簡単にイくなよ、ひどくされたいんだろ」
「う、ぐううっ! はひ、むうぅ、うっ」
ばつんばつんと、肉がぶつかる音がする。激しく犯されている事実に、ぞわぞわと鳥肌が立つ。イくなと言われると、さらに絶頂を意識してしまってよくない。だって気持ちいい、すぐに果てに手が届きそうだ。
「はっ、あっ……あ!? ん、イきそ……ぎぅっ!?」
伸びてきた手にペニスの根を掴まれて、庄助の腰は跳ね上がった。射精の予感に開閉し始めていた尿道が、残念そうにその口を窄めた。
「あ゙~っ……あ、い、ィい……ぁあ……」
上がってきていた精液が行き場をなくしてわだかまる、チクチクとした痛み。握り込まれたまま、また激しく突かれる。好きにしていいとは言ったが、あまりの握力にペニスがちぎれそうで怖かった。
「あひ、ちんこ潰れひゅ……や、うっ……、い、ひぃ……イヤやぁ……」
自分で激しくしてくれと言ったくせに、結局泣きを入れてしまうのが庄助らしい。……いや違う、本当はここから。ダメ、イヤだ、もうこれ以上しないで、の本気の言葉が唇から漏れるまで……漏れたとしても、犯し抜いてほしいのが庄助の本音だ。
どうしてそう思うのか、庄助にもわからない。今まで自分をマゾだと思ったことなどなかった。だからこれはきっと、景虎だからそう思うのだと、自分を納得させ続けている。
握力で閉じ込められた精液が、諦めたようにまた陰嚢へ降りてゆく。それとともにナカが複雑に締まり、別の解放の出口を探し始める。
「……っメスイキしようとしてるんじゃないだろうな」
「し、てな……ひ」
「そうか、庄助は男だもんな。こっちでイキたいよな」
「や、め……お゙ごっ! ひきゅ、あっ、んやっ……うあぁっ!」
手を緩めると同時に裏筋から持ち上げるようにしごかれ、あえなく庄助は射精した。ペニスが震え、とくとくとベッドシーツに白い精が落ちる。
「あ、あ……っおひ……ィ」
「お前はちっとも我慢できないな。それとも、お仕置きされたいのか?」
後ろ髪を掴まれ、反らされた喉仏にまた景虎が噛みつく。絶叫したまま乱暴に下から突き上げられ、庄助は恐れと恍惚の混じった甘い声をあげた。今日は特に、ひどくするだけ一層感じ入ってしまう。
「や……お仕置き、いややっ、あ! あひっ、ううぐ~~っ!」
「喜んで垂れ流しやがって、メス犬」
突くたびに精液が零れて、それと同時にびくびくとナカがうねる。景虎のペニスを押し出そうと懸命に締まる胎内は、まるで別の生き物のようだった。
「ゔあっ、やっあ、あ゙っ、あかんっ! 破れる、は、腹ぁっ、なかみ、内臓、出る゛ぅ……っ!」
「出せよ、全部食わせろ」
死すら感じるような激しい恍惚の中で、必死に息を継ぐ庄助と、獣のように貪る景虎。繋がっている胎内のどくどくという脈動が、一体どちらのものなのかもうわからなかった。
庄助の精液が、景虎の腹を汚す。体液がお互いの陰毛に伝い落ちて、茂みの中に隠れてしまう。
全身の血が逆流しているようだった。
庄助を見ていると、興奮する。景虎はいつもそう言うけれど、庄助だってそうだった。
食われたい、大事にしたい、泣かせてほしい、好かれたい、頼ってほしい、壊してほしい。
自分の中の知らなかった欲望を引き出したのは景虎で、彼のような存在は初めてだった。単なる恋愛の好きとは、なんだか違う。そんな気がしていた。
「俺は庄助が好きだ、どんなになっても」
今しがた出された濃い精液が、腹の中で景虎の亀頭に絡みついている。動くとたぷたぷと音が鳴りそうなほど、内臓の中が熱さに満ちている。
「……カゲはアホや」
足を伝ってお互いの体液が落ちて、シーツが濡れてゆく。カーテンの隙間から差す外の陽の光で、お互いの若い肌のうぶ毛が白く透ける。
こんなふうに景虎と一緒にいるためなら、嫌なことにも怖いことにもちゃんと向き合う。庄助は誓った。
「なあ……俺のこともっと、食って」
食って、とは言ったものの、実際には食事も摂らず二人はセックスをし続けた。
庄助が三度目に意識を飛ばした頃には、もう外の光は橙に変わっていた。
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